銀時は誰よりも苦しんできた誰よりも可哀想な侍だった。あたしはそんな銀時が好きだった。そんなに苦しくても決して諦めないで新たな苦しみに立ち向かっていく銀時が大好きだった。愛していた。自分が苦しむと解っていても戦の中に走ってゆく銀時の背中を追いかけるのが苦しい世界の中のたったひとつのあたしの幸福だった。でもひとつでも幸福をもってるあたしは自分がきらいだった。でも絶対に銀時はあたしのことなんて好きにならないって言う絶望があたしは大好きだった。幸福はいつも人を傷つける。先生と居た日々は今のあたしを傷つけて話さない。苦しいのは好きだけど、傷つけられるのは大嫌いだった。傷つくって事は、あたしはそれを好きだったってこと。好きってことは、幸せだってことだ。そんな風にメビウスの輪化したその輪自体がだいっ嫌い。あたしは銀時が好きだったけど、幸福を追いかけてよろこんでる自分が大嫌いだった。でも銀時が大好きだった。あたしは幸せが嫌いならしい。どうか銀時には誰も好きにならずにずっと世界を憎んだままで居て欲しいと思っていた。その観点で言えばあたしは晋助も好きだった。でも晋助は殺すことに意味を持って目標のために斬ってるからそこまで好きにはなれなかった。だんだん天人を殺していくうちに銀時が守りたいものを持ったらしい。あたしはそれが嫌で嫌で仕方なかった。銀時にはたった一人で頑張っていてほしかった。守りたいものなんか壊してしまえばいいと思った。だから銀時に聞いてみた。「銀時が一番守りたいものって、なあに?」そういうと銀時は幸せそうに頬をぽりぽりと掻いた。(ああ、その顔、だいっ嫌い)あたしは早く銀時の幸せを切ってしまいたくてしょうがなかった。早くはやく、教えて。

「お前」

「ん?あたしがどうしたの?」「だから、俺はお前を守りたいの」「…嘘、でしょ?」「嘘じゃねー」「ほんと?」「ほんと」ああ、そう。そっか。銀時はそんなにあたしが嫌いだったの。言ったよね、あたしはあたしの幸せが嫌いなんだよ。あたしは銀時が好きなんだよ。銀時が好きなんていったら、あたし、幸せじゃん。やだ。やだよ。銀時。銀時は、やっぱり銀時は幸せのほうが好きなんだね。そっか、じゃあ、




ただの幸せな君に成り下がればいいよ


そんな銀時、あたしは嫌い

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