銀時は優しくて暖かくてまるで軟らかい綿であたしを包み込んでくれるように抱いてくれた。あたしにとってそのことは自分でも信じられないくらい衝撃的だったらしい、あたしは銀時に抱かれている間ずっと泣いていた。

「俺はお前を愛してるよ」

あたしの意識が飛んでしまう直前にそんなことを言うもんだから結局その言葉の真意は解らないまま、おつかいに行ったきりだという二人の従業員が帰ってくる前にあたしは万事屋を後にした。あの言葉は「いつでも受け入れてやる」と言う意味だったのだ別に銀時が本当にあたしのことを好きだという訳ではない。そう自分に言い聞かせて勝手に納得した。銀時は優しい。優しいからたくさん傷ついて人の痛みを知っている。銀時はあたしに同情したのかもしれない。人の痛みを誰よりもよく知っている人だからあたしの不安や痛みを和らげたいと思ってくれたのかもしれない。本当に損な性格をした人だ。そんなんだからあたしみたいな悪い女に利用されてしまうんだ。あたしは人に頼らないと何もできないんだ。この浮気だって、晋助が浮気してるからという理由にかこつけて晋助にかまってもらいたいとかあわよくば嫉妬してもらえるかもしれないとか、本当に銀時の痛みと比べればどうしようもなく小さいことで成っているのだからあたしは本当にどうしようもない。

鬼兵隊の船に戻る足は軽いどころかむしろ変なくらいにふわふわと空回っている。それだけ銀時の世界は現実味のない幸せな世界だったのだ。

それもひとつのきみのあいだろうに


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -