仕事で疲れて心身ともに弱ってしまって彼氏である晋助に縋る時、晋助からはいつも女物の香水の臭いがする。それは勿論あたしが使っている香水の匂いじゃない。あたしの使ってる大人っぽい香水の匂いよりもっと女臭くて、ストレートに言うとエロい臭い。これが物語っている事は一つ。晋助は浮気しているんだ。別に驚く事じゃない。元々あたしと晋助は上司と部下であったしそれに彼氏と言ってもただ体を重ね事後に物憂げに言葉を交わす程度の物だった。だから見放されても何ら不思議はない。ただ痛いだけ。

嫌いの反対が好きなら、あたしは晋助が大嫌いだ。でも嫌いの反対が愛してるなら、あたしは晋助を愛してる。そんな名称の付け難い曖昧な気持ちのまま晋助と一緒にいつのは辛かった。晋助が浮気をするならあたしも浮気すればいいのかもしれない、どきつい男臭いえろい臭いを纏った男と寝ればこの痛みも薄れるのかもしれない。そう思い普段は仕事以外の用で出ることのない船の外に出てみることにした。そうこうしてあたしが選んだのはどういうことか、かつては白夜叉と名を馳せた坂田銀時だったのである。



銀時は優しかった。人の痛みを知っていたからあたしの気持ちを捨てることなく浮気しに来たあたしを許してくれた。丸くなったとは少し違う気もするけど銀時は戦争時代よりも確実に優しく、強くなっていた。

「…銀時」
「あ?」
「銀時を愛せればいいのに」

本当に莫迦な女だ。そう言うと銀時はあたしを抱きしめたでも銀時の臭いはエロくも男くさくもない、万事屋と言う空間の匂いだった。嫌いの反対が好きなら、あたしは銀時が好きだ。でも嫌いの反対が愛してるなら、あたしは銀時が嫌いだ。厳しい現実の晋助から優しい幻想のような銀時に逃げている自分は、どちらにせよ大嫌いだった。

かなしい
こころは
すこしずつ
くるう



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