楽しかった高校生活はさっさと幕を降ろし、あたしたちはあのハチャメチャな銀魂高校をさっさと卒業した。そこからは各々の道に別れ、合うことは殆どなくなってしまった。あたしといえば近所の大学に入学して、銀校ほどではないけどそれなりに楽しい毎日を送っている。というより銀校よりもはちゃめちゃで楽しい学校があるのなら見せて欲しい。
今日は授業がないので散歩でもすることにした。特に理由はない。最近よく散歩をするようになった。家のあたりを歩けば高校生活のなかで至るところに落としていった思い出を見つけることができる。アマゾンとか、宇宙並にこの町は広いと思う。だって、いくら歩いても新しい発見が絶えないから。このまえなんか、沖田が近所の駄菓子屋で馬鹿みたいにはしゃいでるの見ちゃったし。あれには大笑いした、満点大笑い。沖田にはなんとかばれなかったと思う。ハイティーンにもなって駄菓子屋とか。でもあたしは沖田のそういうところ、嫌いじゃなかった。ああ、そうだ。ここ、この通りを抜けた公園で、土方が可愛い女の子とデートしてたんだ。あの土方に彼女ができるとはね、あんなマヨネーズ野郎のどこがいいんだか。土方のマヨ好きの酷さは付き合ってみれば解るよ。あたしどこでもかしこでもマヨネーズ使おうとするところみて、引いたなあ。そういえばあの公園、あたしと土方の初デートで最後に寄った公園じゃなかったっけ。あの頃はふたりして中学生みたいに緊張して…今思い返してみればあれほどおもしろいことはない。過去の自分と土方に満点大笑い

「あ」
「ぎんぱち」

自嘲しながら散歩を続けていくと、公園の向こう側の道に銀八の姿を見つけた。銀八もあたしに気づいたようで、こちらに向かってくる。なんでこんな所にいるんだろう。学校は?ああ、今日は校立記念日だった。銀八の私服なんて始めてみたかも。なるほど、別にセンスが悪いわけではない。銀八らしい、ちょっとだらけた感じだ。

「久しぶりだな」
「銀八、変わってないね」

あれ、銀八の笑顔って、こんなにかっこよかったっけ。ほっぺを抓ってみる。なるほど痛い。これは現実か。それにしても銀八がこんなにかっこよく見えるなんて、あたし頭おかしくなったのかな。

「どうした。ボーっとしちゃって」
「銀八がかっこよく見えたからこの世の終わりが近づいてるなって思いまして」
「なにそれ、酷くね?」

ああ、なんにも変わってない。3Zの頃の銀八のままだ。それが懐かしくて、鼻の奥がツンとする。あーあ。明日からはまたつまんない授業を受けて、つまんない友達とつまんない話をして…そんなどこにでもあるような、つまんない日常が始まるのか。

「まあ、教師と生徒っていうしがらみもなくなった訳だし」
「うん」
「これからどっか行かね?」
「どっかって?」
「ホテルとか?」
「その棒ひねりちぎるよ」

そう言ってふたりして笑った。うん、これも満点大笑いでいい。これから銀八と過ごす時間が徐々に増えていって、散歩する回数が減っていけばいい。

それでいい
それがいい


あたしはただ、あの頃に帰りたかっただけなのかもしれない


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テーマ「人外ファンタジー」
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