銀時が浮気をした。と、思う。最近電話することも減ったし、あたしが万事屋に言っても上の空だし。まるで宥めるように抱きしめられた銀時の腕の中は、気持ち悪いくらいの香水の臭いがした。
「…どした?」
「なんでも…ない」
曖昧な気持ちのまま、少しだけ泣いた。理由は実家の昔から仲良くしてくれたおばあちゃんが死んでしまったから、ということにしておいた。あたしは物心付いた頃から孤児なのでそんな知り合いは居ない。勿論銀時はそのことを知っているけど、何も聞かないでくれた。
「ねー、銀時」
「ん?」
甘ったるい声が耳のすぐ傍で聞える。つい先日まではくすぐったかったそれも、今はただ妙に曖昧な気持ちにさせるだけだった。
「あたしのこと、好き?」
「急に、何?」
「んーん、別に」
少し拗ねた素振りを見せれば、銀時はふ、と空気を震わせるような笑い方をした後、色気をこめた声で「愛してる」と呟いた。「あたしも、」と囁けば、二人の体はソファーに沈んでいく。
あなたが嘘をついた、わたしも嘘を吐いた
もうどうにでもなっちゃえって思うのさ
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