「オイ、てめー山崎っつったか」「…はあ、」「ちょっと来い」昼休み、相変らず俺はひとりでパンを買いに行こうと立ち上がると、学年イチのイケメン沖田に話しかけられた。つか俺の名前しってたんだ。意外。大人しく沖田についていくと、まわりの女子たちがヒソヒソと何かいっている「不釣合い」とか「沖田くんと山崎さんって…(笑)」とか。「気にすんじゃねェ、俺ァ元々ああいう女が嫌いなんでェ」「……」「なんでィ、その目は」「い、いや…いつもああいう女子と、一緒に…居たから、意外だなあっ、て…」「…そうかィ」行き着いたのは裏庭だった。この時間帯は人が居ても可笑しくないけど、今日はいないらしい。そこにあったベンチに座ると、沖田が俺に学食の美味しいと評判の限定30個のやきそばパンを投げつけた。沖田の手には購買って売っているらしいが誰も見たことの無いというマボロシのエビマヨネーズサンドが握られていた。「食いなせぇ」「…ありがとう」ビニールを破いてパンにかぶりつく。やきそばパンはうまかった。でもそれ以前におかしい。気まずいような雰囲気が漂う。しかし沖田はそんなこと知ったこっちゃねえと言わんばかりにエビマヨネーズサンドにかぶりついていた。俺がその様子をじっと見ていると、「…一個やりまさァ」「は、」「そんな目で見られちゃァねェ、仕方ねェでさァ」「い、いや…そういうつもりは」「食え」「ぐっ…」無理やり口にサンドを突っ込まれる。むせて味わう暇はなかったけど、コクのある後味だけが口の中に残った。確かにうまい。「…それ、いつも沖田が買ってんの?」「…いいや、これ買ってんのは俺じゃありやせん」「じゃあなんで…」「もらったんでさァ、そいつに」しかし、4限の終了と共に一番近い1年A組の奴等が購買に駆け込んでもエビマヨサンドはもう売り切れていたと言うのに、一体誰が。「…気になりやすか?」「…え、まあ」「そいつァ俺の幼馴染なんですかねィ」どうやらその人はどうにも団体行動と言うのが嫌いな、所謂問題児らしい。しかも女子。いつもは使われない部室にいるらしい。「でも絶対ぇ会いに行くなよ」「……」「返事」「はあ…、」「お前とあいつはちょこっとばかし似てらァ」そういうと沖田はケータイを開いた。なにかメールを打っているようだ。そのようすをぼんやりと眺めていると、俺のケータイに着信。思い出すように沖田が呟いた。「そういえば、お前名前と仲いいですよねィ」「えっ…ああ、まあ」もう慣れてしまった手つきでケータイを開く。するとずいっと沖田が俺のケータイを覗きこんだ「from:しんすけ…まさか、高杉ですかィ?」「え?うん」「お前…すげーな」「何が?」「俺ァ高杉と中学同じだったが、あいつがメールしてるトコなんざ見たことねえ」「へえ…」意外だった。俺と高杉はあれから何回か屋上で会ったりしたが、大体毎日メールしてる。しかも高杉は返信が早かった。だからメール慣れしてるんだと思ってた。「あいつにメル友ねェ…」「案外いい人だよ」「お前がそう言うなら、そうなんだろうねェ」「え、」「だってお前ェ、人間きらいそうだ」確かにそうだ。でも俺がこの高校に入ってから出逢う人はみんな周りの人間と違う。どうしてなのかは解らない。Z組という変わり者ばかりが集まるメンバーで俺は確実に仲間を作っている。沖田に言われて始めて気づいた。「女子共が山崎はうぜえなんて言ってたが、んなこと全然ねえじゃねえか」「はは…」「それに、名前が言ってたぜィ」「…名前が?」「あァ、退くんはそんな人じゃねェってな。そのせいでアイツ、一緒にいた奴等に仲間外れされてんの」「な……」「なァ、お前…名前の事好きだろィ」
れんあい対象
この間の屋上で泣いていた名前を思い出した。「授業になっても退くん居なくて…どこかにいっちゃったかと、思った…」「名前…」「へェ、そいつが名前か。」「…高杉、」「わかってらァ。邪魔モノは退散しねェとなァ」「…ありがとう」「ククク、」高杉は静かに屋上から立ち去った。名前は相変らず静かに泣いている。「…名前、」ピクリと名前の肩がゆれる。「俺は、どこにも行かないよ。名前が俺を嫌いにならなければ」「さが…くん、」

もしかして、本当に俺は。俺はその日、ケータイにアドレスをひとつ足した。「from:ソウゴ 特別にてめーを俺のパシリにしてやらァ」「from:ザキ まじすか」


100816付足

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