「…んん、」
「あ、名前起きたか」
ゆっくりと目を開くと世界は揺れていた。暫く訳がわからず固まっていると、だんだんあたまが冴えてきて今の状況が解った。おんぶされている!?
「お兄ちゃん!?」
「おー大丈夫か」
さも当たり前のようにあたしを覗き込むおにいちゃん。あたしは恥ずかしいやらなんやらでお兄ちゃんの背中を叩いた。でも案外しっかり抱えられてるようで落ちたりはしなかった。
「お、重いでしょ、おろしてよ」
「あ?軽すぎだっつーの。もっと太りなさい」
どうやらおろしてくれる気は毛頭ないようだ。仕方なくしがみついてるとお兄ちゃんが「懐かしいなあ」と呟いた。あたしは一瞬よく解らなかったけど、すぐ思い出した
「夏祭りの時?」
「そうそう。名前の鼻緒が切れちゃってさー、多串くん達とは逸れちゃったし…」
「あのときはごめんね」
「ごめんねよりもありがとうのほうが嬉しい」
「そっか、そうだよね。ありがとう」
そういうと「おぅ」なんて恥ずかしそうに返事するお兄ちゃんが大好きだ。これからもずっとこうしていたいと思う。
昔話は好きですか?
100215