「名前っ!!」
「あ、お兄ちゃん」
終業のチャイムが鳴った瞬間、保健室に訪れたお兄ちゃん。すぐさまあたしの寝ていたベットまで来て、あたしの手を握った。その手は冷たい。いや、あたしが熱いのかな。いつ握ってもお兄ちゃんの手は暖かかった筈なのに。
「コイツ恥ずかしい位心配してたぞ」
「そりゃあ見物でしたねェ」
そのあと直に総悟とトシ兄も来てくれた。神楽ちゃんは居なくて安心した、失礼かな。でも総悟と神楽ちゃんがケンカを始めると止めるのも後片付けも大変なんだからね。トシ兄曰く神楽ちゃんは妙さんの所に遊びに行ったらしい。どうやらトシ兄の配慮で騒がしくならないようにしてくれたようだ。素直にありがとうと告げたら頬を赤らめて小さく返事をしてくれた。
「でもお前マジで顔赤ぇぞ」
お兄ちゃんがあたしの顔を覗き込んだ。うあ、いくら兄弟といってもこの美形に見つめられるとドキドキする。別に恋愛感情とかはないけどお兄ちゃんの彼女とかになったら毎日楽しいんだろうな、妹もとっても楽しいけどね。どきどき、どき。ピト、とお兄ちゃんのいつもは暖かい手があたしのおでこに触れた。ああ、気持ちいいな、お兄ちゃんの手。しかしその手は直に離されてしまった。
「熱ッ!!おま…早退しろ!」
「えぇ…」
「お兄ちゃんも帰るから」
「いいよ、そんな…」
「いいから言うこと聞きなさい!」
そう言うと総悟が「じゃあ名前の鞄取りに行って来やす」とか言って保健室を去り、トシ兄が「銀時の鞄もってきてやる」とか総悟と変わらないことを言いながら保健室を出て行った。つまり二人きり、お兄ちゃんは「大丈夫か」とか「歩けるか」とか聞いてくるけど、もしバレたらどうしよう。冷静にしてなきゃ、冷静に!いつもどうりいつもどうり…
「名前」
「なあああ!?」
びくーん、いきなり名前を呼ばれて驚いた。お兄ちゃんもびっくりしてる。ああ、マズイマズイよ…。そのままあたしの意識は再びどっかへ飛んでいってしまった。
リターン
(おイィィィィイ!!?)
(旦那ァ、どうしやしたか)
(名前がアァァア)
(…落ち着きなせぇ)
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