「……」
「…別にお兄ちゃん怒らないからさ」
いやいやいやいやいや
絶対怒るからね、私の経験上180%以上確実に!!
放課後お兄ちゃんに拉致られるかのように家に帰らされた。はっきり言って今のお兄ちゃんは機嫌が凄く悪い。昼休みトシ兄からメールが来て内容は「グットラック」の一言
いや、覚悟はしていたんだけどね、うん。
「どうして高杉とあんなことしてたの?」
完全にお兄ちゃんの勘違いだ
確かにちょっと抱きしめあってるみたいに見えたかもしれないけどね、違うの、違うんだよおにいちゃん
しかしお兄ちゃんは聞く耳を持たない、最終的には「高杉なんて野郎に名前はわたさねぇええええ!!」とか言いながら狭いアパートのちゃぶ台をひっくり返した。ちゃぶ台に乗っていたお茶がこぼれて床にシミを作る
「……か、」
「え?」
「お兄ちゃんの馬鹿…、」
暴言にしてはあまりにか細く、弱音にしては棘が強すぎた
「本当の事しか言ってないのに」
「…え、まって」
「お兄ちゃん全然聞いてくれないし」
「あの…、」
「お兄ちゃんなんて、大ッ嫌い!」
私はついにキレてボロアパートを飛び出した
一人残されたお兄ちゃんは暫くボーっと玄関を眺めていたらしい
そんなコト私には関係ない
とりあえず身体に任せて走った
すると着いたのはトシ兄の家
少し躊躇ったが家のインターホンを鳴らした
「はい、って名前か」
「トシ…兄」
「お前なに泣いてんだよ」
「だって…」
「総悟もいるが、とりあえず入れよ」
「うん」
トシ兄は不器用だけど優しい
こうやって私を労わってくれる。
何度となく訪れたトシ兄の家、最近は余り来ていなかったけど、変わったところは特になく、それに妙に安心した
「遅ぇですぜ土方…って、名前、どうしたんでさァ」
「銀時だろ、どうせ」
そういうと総悟は「ああ、なるほどねィ」って顔をした
大まかな原因を知っている二人は私に何を言うわけでもなく背中をさすってくれた
その行為が更に私を泣かせた
優しさに涙
(よくやるよな)
(まったくでさァ、名前にだって男の一人や二人、当然でさァ)
(……、)
100118