「お兄ちゃん!遅刻するってば!」
「はいはーい」

こんなに平和な朝は久しぶりのような気がする。今まで謎の視線に狙われてたから。でももう犯人は解ったし、二人とも反省してくれてたから安心だ。ボロアパートから出ると、学校の方へ向かう道の電柱から、金色のなにかが見える。その金色はあたしたちが家のドアを閉め、家に鍵をかけた瞬間電柱からでて、あたしたちの前に姿を現した。

「あ…」
「おはようッス!」

また子ちゃんだ。ちょっと恥ずかしそうに現れたまた子ちゃんはなんだか今までのまた子ちゃんとはちょっと違うみたいだ。やっぱり昨日のことがあったから遠慮してるのかな。また謝られちゃったりしたら、ほっぺむにってしてやろう、そうしよう。

「どーしたァ?こいつ」
「う、うるさいッス!いくら名前の兄だからっていい気になってんじゃないッス!」
「…へ?」

まるで犬みたいにお兄ちゃんを威嚇したあと、また子ちゃんはこれまた犬みたいに目をキラッキラさせながらあたしの両手を掴んだ。

「名前!昨日は感動したッス!」
「はえ?」
「あんな事してたのに簡単に許してくれる名前の寛大さ…いままで気づかなかった自分爆発すればいいッス!」
「あの…?また子ちゃん…?」
「一生名前と高杉先輩についていくッス!」
「えっ」

どうやら懐かれてしまったみたいです。



(まだいたんッスか天パー)
(は…?おま)(ブチッ)
(ま、まあまあお兄ちゃん)


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