放課後、ひとりでいるのが恐かったあたしはお兄ちゃん達の部活が終るのを待っていた。お兄ちゃん達は剣道部。三人とも凄く強いらしい。「名前にこんな野蛮なモンみせたくねーから」とか言ってお兄ちゃん達はあんまりあたしに部活の様子を見せてはくれないけど、竹刀を振るっているお兄ちゃんはとってもかっこいいと思う。
剣道部の部室のすみっこの、お兄ちゃん達の荷物が置いてある場所に正座しながら、あたしはお兄ちゃん達が汗を流しているのを見ていた。いいなあ、青春だなあ。こういうの、

チョメ公なんざクソくらえ!

最近売れ出している高校生アイドル寺門通の曲と共にケータイがポケットの中で僅かに振動している。これは高杉先輩に設定したやつだ!と思いケータイを開くと「いまどこだ」という簡潔な内容のメールだった。あたしはそれに「剣道部の部室です」と返した。なんか気恥ずかしい。あたしはうつむいてしまった。

高杉先輩は凄いと思う。さっきまで謎の視線に怯えていたあたしを、メールひとつでこんなに喜ばせてくれる。

チョメ公なんざクソくらえ!

もう一度ケータイが震えた。今度はあたしの手の中だったのでそのまま受信ボックスを開く。「今から行くから、待っとけ」という内容だ。
え、今から来る?それってどういう…

ばあん!

いきなり剣道部の部室のドアが開いたと思うとそこには高杉先輩と知らない男女が一人ずつ立っていた。高杉先輩と目が合うと、高杉先輩はずんずんとこっちに近づいてくる。剣道部員は全員呆然。あたしも呆気にとられていた。

「悪かった」
「・・・へっ?」
「お前のコトつけてたのこいつらなんだ。迷惑かけたな」

そう言って背の高いひとと金髪の大人っぽい女の人を指した…また子ちゃんだ!なぜまた子ちゃんがこんな所に?…兎に角、二人は申し訳なさそうに高杉先輩の後ろに立っていた。

「申し訳ないでござる…」
「反省してるッス」

あたしにむかって頭を下げる二人を見ていたら、なんだかあたしが悪いことしてるみたいな気持ちになってきて慌てて顔をあげてもらうように頼んだ。

「あ、あの…反省してくれてるなら、怒ったりとか…しないんで…」

取り繕うようにそう言うと例のふたりはあたしのことをじっと見ている。

「改めてみると、名前、アンタやっぱやっぱ可愛いッス…!!」
「流石、晋助が選んだだけはあるでござるな…」

ほわほわした笑顔であたしを見つめる二人。距離はだんだん近くなってくる。えええ、どうしよう

「なにしてんだテメーら!」
「「イタっ」」

すると高杉先輩が二人の頭を軽く叩いた。助け出してくれたらしい。良かった。

「河上万斉でござる」
「え、えと…坂田名前です」

なんか急に自己紹介が始まった。高杉先輩の近くにいる人はみんなテンション高い人たちばっかりなんだなあ…

なかよしこよし

(俺達のこと忘れてね?)
(剣道部に何の用でさァ)
(はやく出てかねえとしばくぞ)


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