「ふうん、あれが晋助様のお気に入りですか」
「ただの庶民じゃないですか」
「どうします?」

「…そうだな、とりあえず捕獲しろ」




どうやら心当たりがあるみたいね





最近妙に視線を感じる気がする。登校中とかお弁当を食べてる時とか、たまに家にいるときにも、屋上に高杉先輩と逢ってる時なんかは特に。複数の人に常に見られているようで気分が悪い。あ、ほら今も。パシャ、と音がした。もしかして、撮られた?

「どうしたアル名前」
「なんでも、ない…」

どうしよう、怖い。不安で仕方ない、でも誰にも相談できない。怖いから、誰かに言ったりしたら、もっと酷い事をされてしまいそうで怖い。だから誰にも言えない。お兄ちゃんにも。ぐ、と息がつまる感じがする。一人になるのが怖くて、先に歩いて行ってしまっている神楽ちゃんを追いかけた。





「やっぱりおかしい」
「ですよねィ」
「何があったんだあいつ」

名前の奇行に、幼馴染三人が気づかぬ訳も無かった。一体何があったのだろうと三人が頭を抱えて悩むも、該当する人物は一人しか浮ばない。銀魂高校の中で、最も過激で最も危険な生徒と謳われ、派手なワイン色のシャツに眼帯というなんとも奇抜な服装をしていて授業には出た例がない。そして尋常じゃ無い程美形で、たとえようが無い程の性欲魔人と噂される…。

「言ってくれんじゃねェか」
「「「あ」」」

後ろから声を掛けてきたのは紛れもない、今まで噂していた人物。高杉晋助だ。うわやっべぇどうしよう。その怒気を孕んでいると思われる笑みはなんというか男の俺から見てもエロい。

「どうしたんだよお前ェが話かけて来るなんて珍しいじゃねェか」
「そりゃお前…そんな廊下のど真ん中で固まってたら気になんだろ。女子じゃあるめェし」
「……」
「……」
「ごもっともでさ」

高杉の案外まともな発言に黙りながらも、やはり頭の中では名前のことを考えていた。

「…で?何話してたんだァ…?」
「いや、名前の様子がヘンで」
「ちょ、おま…なにあっさり情報流してんだ」
「あ、」

当人のあまり好印象とはいえない噂。俺達と仲がいい名前。高杉は名前を気に入っているらしい。…この情報があれば猿でも言いたいことはわかるだろう。怒り出すかと思えば高杉はなにやら考え込んで、暫くすると何も言わずにその場を去った。すらりとした身のこなしは何処で憶えたんだろうか

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