「はあっ…は、」
暫く先輩に腕を掴まれて走り続けたあたしはとうに体力の限界を超えていた。たいぶ長距離を走ったはずなのに、高杉先輩は息一つ乱れては居ない。
「じゃ、どっか行くか」
ふう、と息をつきながらそう言う高杉先輩にあたしは突っ込まずにはいられなかった。
「もう十分走ったじゃないですか!しかも今日学校なのに…って、もう1限目始まってるじゃないですか!!」
「煩ェ、悪ィか」
たったそれだけであたしの言葉を遮った高杉先輩は、ふいに歩き出した。あたしはこの辺の地理には詳しくないので慌てて付いていく。置いてきぼりにされたりしたら大変だ。
「ど、どこ行くんですかっ」
「あそこ」
高杉先輩が指差すのは大きなゲーセン。大きな音が店から漏れていて、近所迷惑になっていそうな面持ちだ。
「え、でも「おら、付いて来い」
ぐいぐい腕を引っ張られ付いていくしかない。嫌々に見えて足はしっかり高杉先輩の後を付いて行っている。楽しみじゃないといえば嘘になる。久しぶりだ。こういうところに遊びに行くの。
ヴィーム、と変な音のする自動ドアを通るとちかちかと光る機械で中は埋め尽くされていた。通る道はあまり無い。カウンダーの所では眼鏡を掛けた陰湿そうな男と爪の手入れをしているギャルが居る。客はそれなりに、居る。しかも学生服を着た人が多い。あたしはびっくりした。高杉先輩を見上げると慣れたような顔で堂々と歩いている。向かったのはUFOキャッチャーが沢山あるゾーン。
「どれが欲しい?」
「え?」
「なんでも取ってやるよ」
ニッと笑った高杉先輩に胸が高鳴った気がする。
あなたのハートを下さい
(じゃ、じゃあ。あのぬいぐるみ…)
100310