いつもどおり屋上でサボっていたら、ケータイが鳴った。メールだ。開くと万斉がなにやら交戦中らしくて、俺に来いと言う。仕方なく付き合い再び屋上に戻り入り口の扉の上にある給水塔に陣取る。ここは見晴らしが良くて、好きだ。暫くそこでただ何をするでもなくじっとしていると、誰かが屋上に上ってくる気配がした。
…おい、屋上は立ち入り禁止だろ。はいってくんじゃねえ。脳内で呟いてもそいつは気付く筈もなく、俺の視界に映りこんできた。

「ふいーっきもちいい!」

そう言いながら入ってきた女はぐるぐると回って心底楽しそうににっこり笑っている。変な奴。ただ純粋に興味が湧いた。俺を恐がるならそれでいい。給水塔から飛び降りると、予想以上に大きな音が出た。驚いて振り返りへたりこむ女。

「テメェ…どこのどいつだ」
「いッ、いいいち1年の、さ、坂田、名前です」
「坂田…?ってことはお前、」

思わず眉を顰める。坂田ってことは、こいつ、銀時の妹か。いや、流石に似てねぇ。似てなさすぎる。

「お前、坂田銀時の妹か」
「え?はい…そうですが」
「…似てねェ」

思わず呟くと「よく、言われます。あはは」と呑気に笑う女、いや名前。なんだか気に入った。俺を見上げるちょっとアホっぽい顔と、笑ったときのしまりのないフニャフニャした顔。普通の女はギャーギャー騒がしくて好きじゃないが、こいつはいい。

「俺は3年の高杉。」
「あの、あなた…高杉さんは、お兄ちゃんの友達なんですか?」

思わず驚く。俺が、アイツの友達?そう見えるのか?こんなヤクザみてーな俺が、あの子煩悩みてーに妹溺愛してヘラヘラするようになっちまったアイツに?笑えねえ。

「友達じゃねェ」
「え…」
「知り合い…いや、腐れ縁」
「そうなんですか、へえ、なんか、意外ですね」

なんでだか知らねえが親と離れて妹と二人暮らしをすることになったらしい銀時は、ガラにもなく真面目な顔でああ言ったんだ。今俺の目の前にいる女がアイツが本気で守りたい女。面白い。なんて面白い奴だこいつ。坂田名前。しばらくこいつで遊んでやるのも悪くないと思える。
名前の腕を引いて無理やり立たせる。否応無く狭まった距離にあからさまに顔を赤くする。

「あ、ああああの」
「腰抜かしてるみてェだったから」
「ああ、ありがとうございます」

ニヤリと笑うと、それこそ慈愛に満ちた女神みたいな顔で笑いやがる。なんだこいつ。面白い奴。

「構やしねェ」

なんだこいつ。俺も。いつもの俺じゃねえ。



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