高杉さんはそのギャップ以上に優しくて気の利く人だった。最初の緊張もすっかり解けて、なんとはない談笑を繰り返した。

「あ、そうだ。高杉さん」
「なんだ」
「め、メアド、交換しませんか」

高杉さんの顔を覗きこむと、何故かキョトンとしていた。2秒後正気に戻った高杉さんが若干どもった声で「あ、ああ…いいぜ」と言った。よく分からないけれど、詮索する気も起きないし、とりあえずメアドは交換してくれるらしいから、深くは追求しない事にした。

「じゃあ私から送信しますね」
「おっおう、待て。すぐ…」
「……」
「おし、来い。」

もしかして、高杉さんって機械とかダメな人なのかな。それでもなんとかつつがなく赤外線は終わり、高杉さんは心なしかホッとしたような顔で屋上のフェンスによりかかった。もしも高杉さんが機械オンチとかだったら…それは凄く…。

「おい、お前…名前」
「はい?」
「もうすぐ授業終るぞ」
「え、もうそんな時間ですか?」

かわいい、かも。

「じゃ、そろそろ行きませんとね」
「おま、名前。名前はよくサボってんのか」
「え?そんなことないです。今日はちょっと…なんというか、特別です。」
「……」
「え?高杉さん、どうかしま…うわっ」

急に高杉さんに腕を引かれ、何故かその腕の中に閉じ込められてしまう。え、なに、どうして。そして、なかなかどうしてその腕が解かれる様子は見えない。

「明日も来い、屋上」
「えっ…それは、私に、サボれと?」
「……嫌か」
「できれば、避けたいような」
「昼休み」
「はい?」
「じゃあ昼休み、な」

微笑む。うわ、やっぱりイケメン。なんというか、色気?フェロモン?のようなモノが漂ってる気がする。そんな代物を近距離で拝ませてくれちゃったりしたら、顔が赤くなったりしても仕方ないですよね。

「うっ、は、はい。了解しました。」

そう言ってなんとか私も笑うと、屋上の入り口の方からなにやら騒がしい音が聞えてきた。誰かがかなりのスピードで階段を登ってきてるようだ。その音は止まる事をせず行き成り鉄製のドアを開け放った。そこに居たのは乱れた制服を着てネクタイに至ってはその手で握り締めて、荒い息をなんとか整えようとしている、お兄ちゃんだった。

「おっお兄ちゃん!?」
「おまっ、名前…っはあ、たか、すぎィ…ぜっはあ…はあ、高杉…ぶっ殺す」
「フン、面白ぇ。やってみやがれ」
「テメーにだけは俺の妹はくれてやんねーからな!死ね!背低杉!バーカバーカ」

お兄ちゃんがそういうと、額に青筋を浮かべた高杉さんとお兄ちゃんはどこかへ走り去ってしまった…。

「名前」
「あ、トシ兄」
「あいつ…銀時はな、一応お前を守りたいんだ」
「え、よくわかんないんだけど」
「俺が、お前がフラフラ歩いてるのを見たっつったらすぐ授業ほっぽり投げてお前探しに行きやがった」
「そうなんだ…。」
「だからまあ、なんだ。あいつが高杉と喧嘩して帰ってきても、あんま怒ったりしてやんな…っつても無理か。お前にゃあ」
「えっお兄ちゃんと高杉さん喧嘩してるの!?友達だって言ってたのに」
「友達…?よくわからんがそれはたぶん違うだろ」



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