校門の前で、神楽ちゃんと妙姉さんと新八君に会った。

「名前ッ!おはようアル」
「おっおはよう!神楽ちゃん」

「銀さんたちもおはようございます」
「おー新八、今日は何時もより遅いんでねーの」
「いや、それは…」
「うふふふふ、今日の卵焼きは自信あるの。土方さん銀さん、あとで教室で食べてくださる?」
「……、」
「……。」

「よォチャイナ」
「あっ!テメーサド、名前に近づくんじゃないアル」
「うるせー大体なんでオメーが名前を独占してんでィ、こいつは俺のことが大好きなんでィ」
「え…それはちょっと」
「何かいいやしたか?」
「……うーん…」

朝から本当に賑やかだ。この集団の中に居られる事が本当に幸せ!
学年が違うトシ兄とお兄ちゃんと妙姉さんとは下駄箱で別れて、今ここに居るのは新八君と神楽ちゃんと総悟。神楽ちゃんと総悟は前を歩きながらぎゃあぎゃあ喧嘩している。

「新八君も大変だねー」
「そんなこと行ったら名前さんの方がよっぽど大変なんじゃないですか?ホラ…あの人が兄だと」
「んー、確かに大変。ぐーたらしてるし、すぐおやつ食べちゃうし。でも」

私はお兄ちゃんと二人暮らしだ。今は両親は居なくて、2Kのアパートで慎ましく暮らしている。
二人暮らしでお兄ちゃんがアレだから、当然料理以外の家事は私の仕事だし、お兄ちゃんは剣道部なのに私は何も部活とか趣味とかないし、他所から見たら私は不憫な子に見えるかもしれない。だけど、それは間違いだ。
お兄ちゃんとの二人暮らしは気ままで楽しいし、家事はちょっと嫌だけど、私が疲れてるときはお兄ちゃんも手伝ってくれるし、幼馴染のトシ兄や総悟もいつも私達を助けてくれる。だから私はちっとも不幸なんかじゃないのだ。かっこいいお兄ちゃんや幼馴染、友達を持てて、幸せなくらいなのだ。

「そうだね」
「うん!そうなの。だから私、頑張れるの」

新八くんと笑うと、かなり前を行っていた神楽ちゃんと総悟がこちらに振り返った。

「まだそんなトコにいんのかィ」
「名前!ヤバいアル!今日の1限、英語アル」
「ええッ!ウソ!やだぁ」

私は英語が苦手だ。本気で一生日本から出ないつもりで居る。

「名前は学校にメシ食いに来てるようなモンだからねィ」
「失敬な!英語以外は人並みにできるし!」
「ま、まあまあ、座りましょうよ。結構時間近いですよ」

新八君に宥められて席に就く。軽くて長い溜息を吐くと、隣の席の退君がくつくつ笑った。

「毎日飽きないね」
「うん。もう総悟のサド早く治ったらいいのに。昔はいい子だったのになあ」
「そうか、二人は幼馴染なんだよね」
「そうなの。退君も部活で大変でしょ、総悟」
「うん!大変。でも沖田さんは強いよ、やっぱり」
「そうなんだぁ。強いんだ、総悟」

それは…それは嬉しい。近しい人が褒められるのは、嬉しいに決まってる。

「退君、これからも総悟を宜しくね」
「なにさ、改まっちゃって」
「んふふ、挨拶は大事だよー」
「優しいね、坂田」

目を見開いて、瞬く。退君の方を見ると、退君はまっすぐ私を見ながら微笑んでいた。

「退君の方こそ、私よりずっとずーっと面倒見がよくて優しいよ」
「そんなことないさ」
「そんなことあるの。」

そんなことを話していると、チャイムが鳴って授業が始まった。



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