※なんだか読む人を選ぶ内容のような気がします。一応閲覧注意


最近よく思います。誰より先に死にたい。
今迄出逢った人たちの誰よりも早く死にたい、と。

「阿呆か」

臆病者以外の何者でもない。大切な人間の死が恐い。誰かを失う前に、自分で全てを手放してしまいたい。
自分の意思で死ぬのは恐くない。自分でお腹に包丁を刺すのは恐いけど、誰かに殺してもらうのなら、ちっとも恐くない。死ぬ最期の瞬間まで私はひとりじゃないということになるし、それはとっても素敵なことなんじゃないかと思う。

「こういう馬鹿な本音を言えば、あんたなら私を殺してくれると思って。」
「あー阿呆だ。救いようのねぇ阿呆だ」

しかし予想は当たらず、血の目立たないような黒い服を纏った沖田は馬鹿らしいとばかりに立ち上がり、私を見下した。

「確かにアンタは愚かだ。だけどそれは俺がアンタを殺す理由にはならない」
「なんで」
「テメーで命をもぎ取れねえような奴殺したって、ちっとも楽しくないからでィ」

半分茶化したようにそう言って、立ち去ろうとする。無意識にそれを追う手と共に、「おねがい」という酷くひらべったいひらがなが口から滑り出た、

「天国で待っていたいんだよ。皆が死んでくるのを。天国なんてないのかも知れないけど、最後にひとりぼっちになるよりずっといい」
「それはアンタの考えだろ。俺が手を貸す必要はねぇ。死にてえならテメーでやんな」
「私、沖田に殺されたいんだよ」

私に背中を向けている沖田の動きが、ぴたりと止んだ。それがどういう意味を持つのかは私にはわからない。

「…俺ァ、行きやせんぜ。天国。間違いなく俺は地獄逝き」

なんというか、その一言で白けた。

「じゃあ、尚更私を殺してよ。」
「なんで」
「人助けなんだから。いいことしたら天国逝けるよ」
「そんなんで天国逝けるような軽い業は背負っちゃいねぇよ」
「私を殺すことは、重いよ。きっと」

きっと、たぶん。
沖田が振り返り、大して面白くもなさそうにへらりと笑った。「いいぜ、殺してやらァ」すらりと刀を抜く沖田を、私は慌てて制止させる。

「今じゃなくていいの」
「なんでィ、それ」
「この世界をできうる限り楽しんだあと、沖田が死ぬ一日前に私は死ぬことにしたから」

気が殺がれたような顔をして刃を鞘に収める沖田。

「ま、なんでもいいや。殺してほしくなったら言ってくだせぇ」
「うん。約束ね。」

よかった。これで思いっきり人生を謳歌できる。あとの事など何も考えず、楽しく、たのしく。

「ねえ、沖田。」
「なんでィ」
「この少なくとも国の人間には、生きる権利はあっても、生きる義務はない。何時死ぬかは、どうやって死ぬかは、自分で決めることができる。」

だから私は全ての自殺が悲しい出来事だとは思わないし、長生きする事が無条件に幸せなことだとも、どうしても思えない。
まあ、どちらにせよ自殺は愚かな行為だと思うけれど、それでも。

「私は、私の意志で、いつか。」

幸せに、死ぬ。
あなたのいない天国へ


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