ヘンだ。

朝から、銀時の様子が変だ。
話しかけるとすぐどもるし、目を逸らされる。休み時間でもあまり私と話してくれないし、ずっと土方とヒソヒソやってる。
流石に私も不安になって、神楽ちゃん達に尋ねてみても心当たりはないと言う。

だけど、目だけはよく合う。

三秒ほど見詰め合って、その間銀時はずっと変な顔をしていて、きっかり三秒後にパッと逸らされる。
そして土方のところに駆けてゆくのだ。
変な顔、というのは、目はびっくりしているように大きく開かれ、口はいびつに笑っていて、眉はほんの少し下がっているのだ。

私は今日の銀時の珍行に、まるで恋する乙女みたいだと感想を抱いたが、銀時と私に限ってそんなことはないだろう。
一人で悶々と考えるのは性に合わない。ので、昼休みのチャイムと共に、銀時よりも早急に、土方の学ランの襟を掴んでレッツランナウェイ。
向かうは中庭。学校で飼育しているウサギの小屋の前で立ち止まり振り替えると、土方は別段、息を乱したりはしていなかった。
ただ土方よりも身長の低い私に襟を掴まれて中腰で、呆れたような困ったような顔をしていた。

「お前の言いたいことはわかってる」
「じゃあ、さっさと白状なさい。銀時は何考えてんの」

途端に口を閉じる土方に、妙なテンションで居ても立ってもいられなくなった私は地団駄を踏んだ。キイィって、昼ドラにありそうな悲鳴をあげて。
馬鹿を見るような土方の視線と、ビクッとあからさまに私から距離を置いたウサギに、なんとか我に返ってうなだれる。

「なんなのよぉ…もう」
「あ、メール」

がっくりと肩を落とす私を尻目に、土方は勝手にケータイを開いた。
急激にしぼむテンションと共に、ぽろりと私の大事な気持ちが口から零れる。

「あのね、土方。しらないと思うけど…っていうか知ってたらびっくりするけど…私、銀時のこと好きなの。だからね、ちょっと寂しかったりするんだよね、今の状況」
「…え?まじで?」
「うん、まじ」

土方はおもむろにケータイの画面を私の方に向けた。目に映るメールの文面。差出人は坂田銀時、その人だった。

おまえ今、名前と何してんの?
うらぎりはなしだからな

「ハァ…ったくよぉ、振り回されえる俺の身にもなってくれよ」
「え?これは一体?」
「あの馬鹿はな、今日おまえに告るつもりだったんだよ」

気がつけば、先ほど逃げ出したウサギは私たちの足元に群がっていた。
何故だ。
理由はわからないが、土方の前でだと言うのに赤面する。思わずうつむき、足元のウサギの数を数えるという名の現実逃避をしていると、土方のゴツゴツした手が頭の上に乗った。

「お前、考えるのとか苦手だろ」
「はい」
「じゃあまず行ってこいや」
「はい」

自ずと足は動き出した。
背後にはウサギに囲まれた土方の姿。なんだかよくわからないけど急がなくては。
銀時の顔ばかりが、頭のなかでぐるぐると。ぐるぐると…?

うまく言えない。生来国語は苦手なのだ。とにかく頭の中が銀時でいっぱいで、早く本物の銀時を見たくて、触れたくて、声を聞きたかった。

「銀時!」
「うおっいきなり湧いてくんなよ」
「私も好き!」

待ってられなくてごめんね


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