※オチが若干シモい?

私は普通の…ちょっとだけビビリでチキンでヘタレな女子中学生。学校では割と目立たないほう、部活には入っていなくて、好きな人とかは特にいない。席は一番最後の列の窓際、隣の席は…クラスでいじめられている西くん。クラスメイトからすると"最悪の席"になる。
もうこのクラスで起こっているいじめに「直接関わっていない人」は存在しない。クラス全員で西君を突き落とした事があるからだ。やりたくてやったんじゃない、なんていい訳は通用しない。だから私も、西くんをいじめる人のひとりだ。
最近の学校生活で一番気になるのは、やっぱり西くんのことだ。どうして皆は西くんをいじめるんだろうとか、西くんて目つきは凄く悪いけどそれ以外は結構カッコイイよねとか、いつも制服の首元から見える黒いのはなんだろうとか、猫を虐待してるのって多分皆がいじめの一環で流した噂だよねとか、そういえば喋ってるの聞いた事ないなとか、どうして西くんはいじめられると解っているのに毎日学校にくるんだろう…とか。
ハッとした。授業を聞かないでぼんやり西くんの事を考えていたら、西くんと目があったからだ。テレビや学校で見せられるビデオの、典型的ないじめられっ子のような弱々しい目はしていなくて、まるで自分をいじめている皆を見下しているような――もちろん私に対しても、そんな目だった。少し傷つく。私が傷つく権利はないし、同情なんてそれこそ西くんに必要のないものと分かっていながら、私の心は痛みを訴えた。いくらそうだったとしても、視線をそらしちゃいけないような気がする。逃げ腰になりながらも視線をそらさず…視線を逸らせないで居ると、フン。と鼻を鳴らして西くんはそっぽを向いた。これが私と西くんのファーストコンタクトだった訳だけど、随分想像の西くんとは違っていた。
なんか、いじめられるのが納得できてしまう感じ。いじめの主要人物たちが、凄く馬鹿な連中に思えてしまうような。いつもは恐くて逆らえない人たちだけど、一番恐れていいはずの西くんからは、きっとただの馬鹿だと思われてるんだ。なんか、凄いな。

そんなことを思った放課後、私はこのビビリでチキンでヘタレな性格から雑用を押し付けられ薄ぼんやりとあんまり綺麗じゃない夕日が見える教室で黙々とプリント同士をホッチキスで留めていた。思わずため息が出てしまう。もしも、私が西くんみたいな人だったら、こんな目に合わされずに済むんだろうなあ。あ、でもそしたらいじめられるんだよね、それは嫌だな…。多分、そんなことを考えている時点でもうビビリでチキンでヘタレなんだ。また、ため息が出た。

「さッきから溜息ばッかじゃん」
「えっ!?に、西くん…?」

いつから居たのだろう、西くんは教室の掃除用具の入ったロッカーに背中を預けてこっちを見ている。っていうか、声、はじめて聞いた…かも。

「そんなにつまんないの、それ」
「いやっそういう訳じゃ…」

私が否定すると、「じゃあ何」という目で見られる。目つきが悪い。きっと普通に見てるだけなんだろうけど、私からすれば睨まれているようだ。睨まれたまま西くんが何も言わないので、なんだか自分が悪いような気がしてきてしまった。反射的に口をつく言葉

「え、えと…ごめんなさい」
「なんで謝んの?」
「えっ!?な、なんでもない、です」
「変な奴。それに敬語いらない」
「は、…うん」

ん?どうしてこうなった?疑問を隠せない。複雑な心境すぎて変な顔になってしまっている私、ずっとこっちを見てる西くん。そして訪れる沈黙。クラスの皆がいると圧迫感を感じてしまう教室なのに、ふたりきりだとただっぴろく感じる。そんな教室に、ぱちん、ぱちんと私がプリントをホッチキスで綴じる音だけが鳴り響く。なんとか沈黙を破りたいけど、なんて声をかけたらいいのかさっぱりわからない。私が混乱状態の中作業を進める様子を、西くんは暫く眺めていた。少しして、飽きたのか掃除用具の入ったロッカーから雑巾とバケツを持ちどこかへ消えてしまった。一体どうしたというのだろう。
ふと、西くんの机に目をやる。落書きだらけだ。そりゃそうだ、だって毎朝西くんが来ない間に皆でいたずら書きしてるんだから。…でも、毎日毎日大勢で書いている割には綺麗なような気もする。まさか、西くん、毎日消しているんだろうか。廊下から足音が近づいてくる音がする。西くんが帰ってくるんだ。帰ってきた西くんが持っていたバケツには水が張られていて、なんだかとても不釣合いで、思わず笑いそうになった。

「……」
「何、ジロジロ見ないでくれる?キモイんだけど」

笑っているような妙な顔をした私を、西くんは心底気持ち悪そうに見てくる。私は慌てて笑いたい気持ちを押し殺し、まったく余分なものがない西くんの細っこい手が、乱暴に机をぬぐっているさまを見た。カッターで彫られた落書きは消せないまでも、水性ペンで書かれた落書きは短時間でもたいぶ落ちた。その間に私の作業も終わり、西くんが仕上げに雑巾を濡らしなおして拭いている間にそそくさと先生に提出しに向かった。

教務室から帰ると、そこに西くんの姿はなかった。ちょっとだけ西くんが居てくれることを期待したけど、流石に無理があった。綺麗になった西くんの机をみて、今度紙やすりを持ってきてこっそりカッターで彫られた落書きを消す誓いを立てる。鞄を手に取り、教室を出よううと扉に向かうと空のバケツを持った西くんが再び現れた。かなり近い。どぎまぎする私をよそに、西くんは無表情で私の横を通過。そして掃除用具のロッカーにバケツと雑巾を乱暴にぶちこんだ。

「じゃあ」

一応挨拶的なものをして鞄を片手に立ち去ろうとする西くんに、私は反射的に声を出した。

「あっあああああの!一緒に、帰りましょう!?」
「………」

な、なにしてるんだ私!?いいのか私、どうするつもりだわたし。西くんといえば目をまんまるにして私を凝視している「なにコイツ、本気で言ッてんの?」って感じ。でも無表情と厭そうな顔以外の表情は初めて見れたかも。ちょっと嬉しい…ん?あれ?

「別にいいけど」

っておい!いいのかよ!脳内ツッコミをかますと、西くんはスタスタ歩きだした。あれ、いいんじゃないの?と思い立ち尽くしていると「早く来い。来ないと置いてく」といわれた。そうか、西くんって人とかかわるのが苦手なんだ、と今更のように思う。苦手というより、きっと経験地が少ないのだろう。小学校でもいじめにあっていたことは容易に想像がつく。何も言わず、西くんの後をついていく。容赦なく歩くのが早い西くんに、わたしは小走りにならざるを得なかった。

「お前…歩くの遅すぎ」
「え…ごめんなさい」

そしてまた無言。もう慣れてきちゃったかも。慣れたっていうか、それに順応した?いや、変わらないか。ていうか、順応って、小動物か、私。そんなところからも自分の弱さが窺い知れ、なんとなく脱力感を感じていると下駄箱まで来てしまった。あれ、自分のペースで歩いたのに西くんにおいていかれてない。ってことは、もしかしてペースをあわせてくれたのだろうか。
多少なりとも感動しつつ、これ以上西くんにトロいと思われたくないので、急ぎながら靴を履き替え、そのままスタスタ歩いていく西くんを追いかける。

「ちょっと寄るところあるけど、いい」
「へっ?あ、うん」

西くんが寄り道するって…一体何処に寄るんだろう。コンビニ、書店…いろいろ考えるけど、思い浮かんでは沈むばかりでどれもしっくり来ないような気がした。

「あの…西君」
「何?」
「えっと…その、」
「はッきり喋ろよ」
「ご、ごめん!あの、どこいくの?」

西君はこちらに振り返り、私と歩幅一歩分も無い程接近して止まった。少し上に西君の顔。急にどうしてこんなに近いんだ。西君って案外まつげ長いな、羨ましい。唇もほっそりしてるし、痩せてるし…。
あ、な、何を考えてるんだ私は。

「ホテル」
「ぅ、え?」
「ホテルにいくんだよ」
「な、なんで?」
「苗字と、ヤるため」

にやりと笑んだ西君がどうしようもなく性的だ。さよなら私の処女よ

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