「やー、銀さん、おつかれさまです」
「おー。それにしても今日は疲れた。風呂入って寝る」
「沸かしてください」
「やー」

やーって、可愛いなオイ。今日、万事屋はなんらかの大変な肉体労働をした。そう、なんらかの、だ。深くは聞かないで欲しい。
それに釣り合う賃金を依頼人から掠め取り、帰ってきたのは午後8時。もう何もしないで寝たいけど、汗や泥でドロドロな身体をなんとかしたい。

「シャワーで済まそうかな…」
「湯船につかりてーよ湯船が俺を呼んでる…」
「じゃあ自分でして下さい。私先入りますんで」
「うぇー、名前ちゃあん」
「ヤですー、私もう疲れたんです。無理です」
「そこをなんとか」
「無理です。私おんなですよ。銀さんの3倍疲れたんです」
「もー、じゃあいいよ、もー」

もーって、オイ。可愛いな、おい。甘やかしたい思いに駆られるけれど、ここはキっと心を鬼にして着替えを持ってお風呂場に向かう。あー、これ、明日絶対筋肉痛だ。やだなあ。
汗や泥や疲れその他諸々をシャワーで流していると、部屋の方から酷い音がした。

「ギャーッちょ、オイ!待ってタンマタンマ!っておま、おっおっギャーーーース!!」

何してるんだ。ちなみにここは私が住んでるアパート。部屋に銀さん以外の人はいない。呆れてため息を吐く私と、叫び声以来ウンともスンとも音を立てない部屋。やや怪訝に思いながらもお風呂場を出て寝巻きに着替えて部屋に戻ると、そこにはなんとフツーに銀さんが居た。猫になったりしてなかった。

「もー、なんなんですか急に叫んだりして。大家さんに怒られるのは私なんですよ」
「はあ…すみません」
「え?銀さん、なんで私に敬語なんですか?」
「…僕、銀さんって言うんですか?」
「…え?」
「…すみません、よく、覚えてないです」
「ええっ!?」

たしかに銀さんをよく見ると、なんかあんまり死んだ魚の目っぽくないし、居住まいはちゃんとしてるし、なんか、なんか…

「いつもより、いい」
「え?なんのことです?」
「あっいや、こっちの話です。えーと、記憶喪失、ですか?」
「そうみたいです。名前さん」

にっこりと笑う銀さん。うわわわわ銀さんのこんな素敵な笑顔見ると、うおおおおお。

「って、え?私の名前?」
「はい。なんだか名前さんのことは覚えてるみたいです。僕」

じわじわと頬が熱くなってきた。お、おぼおおおぼ覚えてる?私のことを?

「しょっ…そっそうなんだ」
「はい。それ以外はさっぱりですが…」
「そっそう、なんだ…ハハ、それにしても原因とかないのかな…」

銀さんはニコニコニコニコしながらただひたすらこっちを見ている。見ている。見ている…あれ、なんか笑顔が純粋じゃなくなってきてる気がする…。

「っていうか銀さん、あ、あなたの名前は坂田銀時って言うんですよ」
「あ、じゃあ名前さんは坂田名前ですか?」
「うえ!?ち、違います…!」
「あ、そうでしたか」
「〜っそうじゃなくて、銀さん、記憶喪失なのに、なんでそんなに笑顔なんです?普通、動揺したりとか…なんか、記憶喪失にしてはなんか違和感があるというか…」
「やっと気がついたかバカめ」

何か、聞えるはずのない声が聞えた気がする。急いで銀さんを見ると、銀さんはまた純粋スマイルを発動している。くっ…心臓に悪い…っ。

「い、今のなんだろ、そ空耳かなぁ〜」

若干あからさまな反応をしながら銀さんの様子を伺っても、銀さんはきょるんとした瞳で首を傾げるだけだ。ぐううッ破壊力ッ

「ひどいよ銀さん!私の心を玩ぶなんて!」
「…お前ってホント俺のこと好きなー」
「う…っうるさい!黙れ!」

もしかして記憶喪失?

「ま、じょーだんよ、ジョーダン」
「うう…私の親切心を返せ…」
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