「やー、銀さん、おつかれさまです」
「おー。それにしても今日は疲れた。風呂入って寝る」
「沸かしてください」
「やー」

やーって、可愛いなオイ。今日、万事屋はなんらかの大変な肉体労働をした。そう、なんらかの、だ。深くは聞かないで欲しい。
それに釣り合う賃金を依頼人から掠め取り、帰ってきたのは午後8時。もう何もしないで寝たいけど、汗や泥でドロドロな身体をなんとかしたい。

「シャワーで済まそうかな…」
「湯船につかりてーよ湯船が俺を呼んでる…」
「じゃあ自分でして下さい。私先入りますんで」
「うぇー、名前ちゃあん」
「ヤですー、私もう疲れたんです。無理です」
「そこをなんとか」
「無理です。私おんなですよ。銀さんの3倍疲れたんです」
「もー、じゃあいいよ、もー」

もーって、オイ。可愛いな、おい。甘やかしたい思いに駆られるけれど、ここはキっと心を鬼にして着替えを持ってお風呂場に向かう。あー、これ、明日絶対筋肉痛だ。やだなあ。
汗や泥や疲れその他諸々をシャワーで流していると、部屋の方から酷い音がした。

「ギャーッちょ、オイ!待ってタンマタンマ!っておま、おっおっギャーーーース!!」

何してるんだ。ちなみにここは私が住んでるアパート。部屋に銀さん以外の人はいない。呆れてため息を吐く私と、叫び声以来ウンともスンとも音を立てない部屋。やや怪訝に思いながらもお風呂場を出て寝巻きに着替えて部屋に戻ると、そこに銀さんの姿は無かった。

「ニャー」

変わりに居たのは

「え、なにこの、特定の人物を連想させる死んだ魚の目をしたモフモフの白い猫」

そう、猫だ。特定の人物を思い起こさせるような死んだ魚の目、モフモフでカールがかかった白い毛、ちょっとヨレたひげ、ぷにぷにのピンクの肉球、可愛くない鳴き声…。白い尻尾をゆらゆら揺らしてこっちを見ている。見ている。疲れたてた表情で、こっちを…。

「ニャー」
「え、まさか」

猫の足元には、それまで部屋に無かった怪しい瓶が落ちている。拾ってラベルを声に出して読んでみる。

「股旅にやにや星特産猫化ファクタースリー錠剤タイプ。一粒でネコミミが生え二粒でしっぽ、三粒で語尾ににゃ(ハートマーク)が付き…一瓶飲んだら完全猫化?」

と、いうことは、この猫は銀さんで間違いなさそうだ。しかしまたどうして一瓶も飲んだりしたんだろう。こういうのってバカなカップルが戯れのプレイのためとかに三粒くらい飲むものなんじゃないの?

「…そういうこと」
「………にゃあ」

つまり?これを?私に?三粒くらい飲まそうと?していたって?そういうことですか?
銀さん(猫)は面目ないとでも言いた気な顔で鳴いた。

「それを誤って自分で全部飲んだんですか?ハア…」

バカと言うかアホというかなんというか
それでもシュンとしてる銀さん(猫)がちょっとかわいいとか、そういうのではない。ウン。

「どんくらいで元に戻るんですか」
「にゃ、にゃあー」

ラベルの裏を見ると、「一粒一時間、二粒一時間半、三粒二時間…」と書かれている。この方式で行けば、銀さんがもとに戻るのにかかる時間は…

「あと72時間です」
「………。」
「なんか、徐々に戻っていくみたいですよ?ってことは、あと三十分で喋れるようになるのかな…。」
「んや、もう喋れる。実は」
「え?」
「ニャーがにゃーになったあたりから喋れたよ。実は」

じゃあ早く喋ろよ…。

「……じゃああと72時間半ですね。」
「おー…。」
「ゆっくり時間が経つのを待ちましょう」
「…ちょい待ち、名前ちゃん。もしかして、」
「はい?」
「もしかして元に戻る1時間前とかはさ」
「はい?銀さんネコミミですね。それが?」
「ん?うん…なんでもない…」

彼が猫になっちゃった!

「3時間前あたりに散歩に行きましょう。真選組のあたりまで」
「なにそれ拷問反対!」
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