「…銀時」

その日の名前はいつもと違った。ふにゃりと砕けたような雰囲気なんて微塵も見せない真っ直ぐな眼光。今日はカラーコンタクトをしていないようで、墨を水で溶いたような透明感のある瞳が見えた。とてもうつくしいのに、どうして隠してしまうのだろう。

「話がある」

園に行きませんか

真黒な着物を、大人しく着こなしている名前は、それだけで大人びて見える。

「私はもうすぐ帰らねばならぬ」
「…は?」
「帰るのだ。生まれた故郷、魔界に」

いつもの冗談を言っている。そうだ、そうに決まっている。だってここは天人に支配されからくりが世界の多くを動かしているような時代で、名前は間違いなく今ここに存在してる人間で、そしてなにより…

「魔界ってさ…」
「ああ」
「やっぱいるの?その…アレとか、さ」
「……銀時」

「オバケが恐いのだな」


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