「ぎゃあああああ」
「ど、どうした!」
「恐いっ恐いいいい!」

いつもどおりの昼下がり、俺がぼけっと通販番組を見ていると、名前が中二病らしからぬ叫び声をあげて俺に飛びついてきた。悪意はないのはわかっているが名前の細い膝が俺のみぞおちにめりこんですげー痛え。しかし俺に必死にしがみついてくる名前の姿はいつもの邪気眼モードからはかけ離れていて可愛い。これで服装が普通の女と一緒だったら…。

「助けて銀時っ!あれが…あれが来るゥ!」
「どうしたんだよったく…お前がそんなにビビるってただごとじゃねーぞ」

うっすら涙を浮かべておれから離れようとしない名前。たいしたモンが来るとは思えない。困惑して頭をかくと、玄関のインターホンが鳴った

「き、来たアアァ!」
「ぐえっちょ、首しめんなっ!俺が行ってくるから」
「やだああ!行かないでっ傍にいてええ!」

くそっ可愛い…が、苦しい!これじゃあ神楽と差なんてねえじゃねえか。生憎家には俺と名前しかいないので名前をおぶって玄関まで行く。擦りガラス越しみ見えるシルエットは…お妙?

「こんにちは」
「どうしたんだよお前…っ!」

玄関を開けて、そこでやっと気付いた。名前が恐れていたモノの正体。お妙が持っていたのは弁当箱。その弁当箱から黒いなにかがはみだしている。そしてこの臭い…

「卵焼き作りすぎちゃって…もらってくださる?」
「あ…っ!ああ、わかった。わざわざありがとな、じゃあ」

とりあえず受け取るだけ受け取って処理したほうがいいと即座に判断した俺はその弁当箱を受け取って戸を閉めようとする。が、お妙はそれを許さない

「今ここで食べてちょうだい、感想が聞きたいの」
「えっ…!今ここで!?」
「そうよ」

名前と言えば恐怖に口を開こうとしない。俺の背中に乗って目を瞑り鼻を塞いでいる。

いきれない涙と過去

「でっでもなァ…もう昼メシ食っちゃったしィ、腹いっぱいつうか…」
「別に卵焼き一口くらい大丈夫でしょう、早く」
「いや…でも、さァ?ウン、やっぱり…」
「は・や・く」
「ひいい!」


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