「…はあ、これ以上言い合ってもなんともならねーことが解った」
「ああそうだな」
「腹減った、名前、帰るぞ」
「うむ…提案なんだが銀時」
「んあ?」
「今日1日で通常の倍近く歩いてしまって疲れたのだ、おぶってくれ」
「はあ?……ったく、しゃーねーな」
「すまない」
「なんてこたァねえよ」

異様なまでの興奮状態に陥ってしまった土方君と銀時を宥めるのは簡単じゃなかった。かぶき町の外れの空き地→空き地から上り坂をけっこう登った場所に位置するラブホ→かぶき町の反対側に位置するご主人様えりすぐりの団子屋→そのほぼ中央に位置する屯所。までの道のりを歩きの早いご主人様について歩いたのだ。いつもはこの辺をふらつくだけの私には、少々きつい。私以上にこの町を走り回り、更には真選組鬼の副長と殴り合いまでした銀時が私より疲れていないはずが無いのに。だけど私は銀時の背中に手を伸ばす。ご主人様に言われたのだ。たまには甘えてやんな、と。

「銀時の背中は乗り心地がわるいな」
「なんだとテメー、銀さんの背中におぶられることのできる奴なんて滅多にいねーんだぞ」
「その割にはやけに硬い」
「文句言ってねーで感謝しろってんだまったく」
「ああ、ありがとう」
「…そんな素直に言われっと…」
「銀時の背中は硬いしがたがた揺れるが、とても暖かく安心する匂いがするのだな」
「フン…調子いい時ばっかデレやがって」
「何を言うか、きちんと感謝しているのだ。これでも」
「はいはいわーったわーった。もういいよ。ほら急ぐぞ。新八達がメシ作って待ってる」

そう言う割に、銀時はやけにのろのろと歩く。やはり身体に障るのだろうか。

「銀時…」
「人をおぶるなんていつぶりだろうなァ」
「…ん?」
「かついだりキモチワリーヤローだったりしたことはあったかもしんねーけど」
「……」
「やっぱお前は良いわ」
「…そうか」
「ああ」

ンチメンタル

銀時の背中に顔をうずめる。やっぱり銀時は私の何倍も大人だ。


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