冬休みの時間を利用して名前に会うために上田に帰ってきた。本当はここは僕の故郷じゃないんだろうけど、ここに来る時はいつも帰ってきたという言葉を使ってしまう。それはここが、僕が成長できた場所だからなんだろう。大きな陣内家の敷地内に入ると、夏の時とは一味違った風情を醸し出している。荷物を納戸に置いて名前を探す。夏希姉はもう来てるらしいからきっと名前も来てるだろう。

「佳主馬ー」

夏希姉と名前は年は違うけど双子かと思うくらいそっくりだ。見分けるポイントは夏希姉は僕を「佳主馬」って呼び捨てにして名前は「佳主馬君」って呼んでくれる所。あとは名前の方が少し背が低い気がする。

「あ、夏希姉。名前は?」
「ほんと佳主馬って名前好きだよね」
「は!?なななな何言ってんの」
「ははっ、どもりすぎ」

夏希姉は僕をからかうから好きじゃない。兄妹なのに優しい名前とは大違いだ。

「名前のどこがそんなにいいの?」
「い、いいだろ何でも…」
「えー、じゃあ、そんなこと言うなら名前の居場所教えなーい」

にやにやと笑う夏希姉。僕は腹が立ったので夏希姉を無視して納戸に向かった。

「あれ?行っちゃうの?」
「どうでもいいだろ、どうせこの家の中にいるんだし」
「へー、そっかあ…じゃあいいや」

なんだ、変な夏希姉。とにかく僕は名前を探すべく台所の方に向かった。

勝負の果てには…

「あれ、佳主馬。来てたんだ」
「なに言ってんの?夏希姉」

なんと台所には夏希姉が。そこまでして僕をからかいたいのか。

「は?何言ってんの?あ、そう言えば名前見なかった?」
「さっきから探してんじゃん」
「さっき私に扮して佳主馬を迎えに行ったんだけどなあ」
「は!?」
「見なかった?」

ニヤニヤ笑う夏希姉。じゃあさっきのが…?






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