冬休みの時間を利用して名前に会うために上田に帰ってきた。本当はここは僕の故郷じゃないんだろうけど、ここに来る時はいつも帰ってきたという言葉を使ってしまう。それはここが、僕が成長できた場所だからなんだろう。大きな陣内家の敷地内に入ると、夏の時とは一味違った風情を醸し出している。荷物を納戸に置いて名前を探す。健二さんも来てるんだから名前が居ない訳がない。 「あ、佳主馬くん。どうしたのそんなに急いで」 「健二さん!名前は!?」 のしのしと陣内家中を徘徊していると、丁度よく健二さんが通りかかった。 「え?名前?来てないよ」 「は!?なんで」 健二さんの服の襟を掴んでがくがく揺すると、健二さんの首は壊れたおもちゃみたいにぐらぐら揺れた。 「ちょ、か、佳主馬くん」 「早く言いなよ」 睨みを効かせて凄むと、健二さんは慌てて口を動かした。 「ぶ、部活が忙しいらしいよ!」 「なんで!」 不戦敗 「な、なんか佳主馬くんテンションおかし…」 「うるさい!今すぐ連れて来て!」 「そんな無茶な…!」 |