冬休みの時間を利用して名前に会うために上田に帰ってきた。本当はここは僕の故郷じゃないんだろうけど、ここに来る時はいつも帰ってきたという言葉を使ってしまう。それはここが、僕が成長できた場所だからなんだろう。大きな陣内家の敷地内に入ると、夏の時とは一味違った風情を醸し出している。荷物を納戸に置いて名前を探す。名前は理一おじさんと一緒にこたつで温まっている。

「あ、佳主馬くん」
「やあ」
「……どうも」

名前の座っている場所のとなりの角に腰をおろす。僕は改めて奇妙な光景を見つめなおした。いや、別に親子が仲良くこたつで温まることには文句はない。親に素直に甘えられる名前を羨ましいと思わなくもないなんてことはない。ただ僕が言いたいのは、その年になって親の足の間にはさまってこたつに入るのはどうだろうということだ。

「その格好どうにかしたら」
「なんで?暖かいよ」
「やきもちかい?」

「ち、違う!」慌てて反論するけど、理一おじさんはおもしろそうに笑っている。この人苦手なんだよな。いつも余裕綽々って感じで、つかみどころがない。

「隙間風が多くて寒いんだけど」

そう言うと名前は「そっか、それはダメだね」と理一おじさんから離れようとする。だけど名前が半分腰を上げたところで、理一おじさんが名前の腰に手を当ててそれ以上離れられないように固定した。

「行かないでよ、寂しいからね」
「ちょっと!お父さん」

理一おじさんがこっちを見てにやりと笑う。僕は悔しさのような敗北感のようなよくわからない感情に苛まれた。

惨敗

「お父さんどいてよ!もう嫌い!」
「な…っ」

名前の顔が真赤だ。どうやら僕は完全な負けではないらしい。






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