小太郎と晋助は形は違えど同じ攘夷志士に、坂本は宇宙へ行ってしまった。戦争の最後に私たちが住処にしていた廃寺にはもう私と銀時の2人だけ。まだ血なまぐさい臭いのとれないこの場所から早く離れてしまいたくても、私には行く場所がなかった。銀時は、とりあえず江戸に向かって自営業などをするらしい。今日の昼には銀時も江戸に向かって行ってしまうらしい。こんな恐ろしい場所に1人なんで、絶対嫌なのに。

「…頑張ってね」
「おう」

銀時は何を考えているのか、さっきから何を話しかけても適当な返事しかしない。これが最後の時間だって言うのに。二度と会えない訳じゃない。だけど、出逢ってから初めての分かれ道で、先に行った3人のことも含めて私はとても不安だった。だけど銀時に迷惑なんてかけられないから、寂しさを一生懸命押しつぶす。気づかれませんように。

「…お前、昔っから俺達がお前置いてどっか行く時なんてビービー泣いてやがった癖に、今日は泣かねーのな」
「うん…皆に迷惑かけられないしね」

しかしそんな見栄は、長年一緒にいた銀時にはすぐにばれてしまうらしい。他の3人がここに居たとしても結果は同じだっただろう。これ以上隠そうとしても無駄だって判断した私はあっさりと銀時に胸の内を明けた。そう、これ以上迷惑はかけられない。私の違和感に気づいてしまった銀時に、心配だってさせたくないから。

「どうせ今回もビービー泣いて一緒に連れてってくれって言ってくんのかと思ってたぜ、俺ァ」
「大丈夫だよ、多分。私ももう子どもじゃないしね」

どうして銀時は腑に落ちないような顔をしてるんだろう。折角ひとりで歩き出せる機会なのに。私と同じで不安なのかな。いや、銀時に限ってそれは無い。あったとしてもこんな風に露骨に表したりはしないはず。小さい頃皆に付きまとっていた私を一番鬱陶しがってた銀時が、今更何を?

「来いよ」
「え?」

手を弄っていた視線を上げる。銀時の少し照れたような顔が、ついこの間まですぐそこにあった5人の日常を思い出させて涙が出そうになった。

「俺と来いよ」

銀時の赤い瞳がどこまでも奥深くで煌いていて、私は無意識に首を縦に振っていた。


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