今日は仕事が無い筈なのに、午前から銀時がいない。どこに行くのか尋ねても「ちょっとヤボ用」と言ってはぐらかすだけで、私には何も教えてくれなかった。その事に少し不安になってしまうのは、まだかぶき町に来て間もないからか、まだ自分の心が不安定だからなのか、それとも…。着物の上から自分の心臓を触ってみる。どくん、どくんと確かに脈打っていて、少し強張った息を吐けばほんの少し瞼が熱くなった。テレビでも見て待っていよう。そう決めてテレビをつけると、そこには暫く前までは毎日のように見ていた2人の男の顔があった。

「戦時に戦を風靡した鬼兵隊が再結成されつつあるという情報が入り、それにより穏健派の桂小太郎らが刺激されテロなどが起こる危険性が――…」

こんなことになるだろうと言う事は、私も銀時もなんとなくわかっていた。だけど、だから悲しい。別に彼らが彼らのしたいことをしたからと言って、それはいいと思う。だけど、ふたり、特に晋助が自らを傷つけているように見えてしまって、仕方ない。血だまりから抜け出すことをせずに不敵に笑ってみせる晋助が、私にはとても恐い。フラッシュバックする。晋助が片目を失う瞬間。人が修羅になる光景。頬を伝う生ぬるい血液。鉄と黴の匂いがする。懐かしく、恐ろしい。急いでテレビを消して、外に出た。深呼吸して、昼間のかぶき町の匂を肺にたっぷり詰め込んだ。大丈夫、大丈夫。ここに血のにおいはしない。
とても平和な、これから私の生きる世界だ。


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