かくして、私と銀時の新しい生活は始まった…とは言いつつも、一文無しであてもない私たちにできることなんてとりあえず江戸に向かって歩を進める以外無く、寒さを紛らわす為に2人で昔みたいにくっ付いて雪でさくさく鳴る足を進めた。長い時間何も言わずに歩き続け、やっと人の多い場所にたどり着いた(もともと私たちが居た場所は江戸からそう遠く離れていた訳ではないのだ)。

「腹減った」
「私お金持ってないよ。全部晋助が持っていった」
「あのヤロー…こんど会ったらしばく」

その言葉に、私は目を丸くした。銀時の口から、皆との再会を思うような言葉が出るとは思わなかったからだ。銀時はそんな私を気に留めるわけでもなく、再びふらふらと歩き始めた。私も後に続く。銀時が向かったのは墓地だった。さっきの言動からして、お墓に供えられたものをつまみ食いするつもりだろうか。止めさせようにも、それを止める言葉は全て昔の銀時への軽蔑になってしまいそうで恐い。銀時にはなるべく人間らしく生きて欲しい。

「ぎ、銀時」
「大丈夫だって、誰も見てねーよ」
「そうじゃなくてっ、誰か来た!」

私達は慌ててすぐそこにあった墓石の裏に隠れた。だけど成人に近い人間が2人もすっぽり隠れてしまうほどのスペースはなかった。ぎゅうぎゅうと声を押し殺して銀時と揉めていると、すぐに銀時に口を塞がれた。反射的に身体の動きも止まってしまう。足音からして、誰かがこの墓石を挟んだ向こうに居るらしい。さっき一瞬視界に移った姿は黒い着物を着こなした熟女の人だった。いざとなれば走って逃げる事もできるだろう。だけどどっしりと腰を据えた銀時は走って逃げる気など毛頭ないかのように私の腰に手を添えて動きを牽制している。銀時を睨むとその目は「まあ俺に任せとけ」とでも言うかのようににやりと笑ってみせた。これがお伊勢さんとの出会いである。


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