なんとか自分を宥めて、そのまま階段に座って町の光景を眺めていたら、見慣れぬ乗り物に乗っている銀時が見えた。荷台にはビニール袋が置かれている。私が外に出ていることに気付いた銀時は、一瞬怪訝そうな顔をしたあと、すぐにいつもの死んだ目を私に見せて、ゆるく手を振った。

「名前、ちょっと降りて来いよ」

言われるままに降りると、銀時はその乗り物を見せてくれた。バイクのようなもの。ところどころ錆びていて、中古であることがありありと感じられた。

「易く売ってもらったんだ。仕事で歩いていけねえとこにも行くだろうからな」
「そっか、よかったじゃん」
「これから万事屋仕様にすっから、お前も手伝え。お前器用だろ」

銀時はバイクの荷台に乗っていたホームセンターのロゴがプリントされたビニール袋から錆び取りやカラーリングスプレーなど諸々の道具を取り出し、地面に並べた。

「お店の目の前でやったら、お登勢さんが怒るかもよ」
「あんなババア怒らしときゃいんだよ」

もうすっかりやる気である銀時は、せっせと錆を取っている。私も隣にしゃがんで、銀時の作業の様子を眺めていた。

「手伝えよ」
「銀時がするのを見てたいんだよ」
「早く終らせてーんだよ」
「いいじゃん、どうせ暇なんだから」
「今日のうちに終らせたいのー、いいから早く手伝いなさーい」

そう言ってむりやり押し付けられた錆とりで仕方なく錆を落としていく。しかし熱中すればこれがなかなか楽しいもので、夢中になってやっているうちにお昼過ぎになってしまった。

「やっと終った…って、手荒れが…」
「次は塗装」
「えっ、銀時がやってよ!」
「うるせえやれ!商売用なんだからちゃんと塗れよ」

白と水色のスプレーを取り出す銀時。どんな風に仕上げたいかを綿密に告げられ、どうして銀時がこんなにやる気なのか考えあぐねながら塗装の作業に移った。


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