不謹慎にも程がある。ここには安全な毎日が保障されているのに。しかしここには戦慄を覚えるような充実感も、仲間と共に希望を追う素晴らしさも無かった。平々凡々な誰にでも掴める幸せよりも、私達にしかできなかった危なっかしくてその場しのぎの幸せのほうが、私には合っていたように思えてならない。その時の私の気持ちは、戦争の始まりの頃、銀時達に置いていかれそうになった弱い少女だった頃の私に似ている。付いて行っても別れて暮らしても明日の保障なんて無い。どっちも同じなら、少しでも皆で一緒に居たかった。最後は皆、「仕方ないな」なんて言って私を受け入れてくれるんだから。

"来いよ"
"え?"

だけど今は違う。もう子どもじゃない。自分の損得を考えて行動しないとならない。いつまでも、自分の好きには生きられない。我侭は言えない。銀時の少し照れたような顔が、ついこの間まですぐそこにあった5人の日常を思い出させて涙が出そうになった。それはつまり、私はまだ血に飢えた餓鬼であるという訳で、安全牌を並べて生きていくことの大切さを、まだ理解できていないんだ。頭ではきっと理解できている。だけどできない。身体が血を欲している。それを押さえつけるのは、とても、辛い。あの時、銀時達が戦争に行くと決心した時。私を置いていこうとした銀時達に大人しく従っていたら、こんな押しつぶされそうな気持ちになったのだろうか。心配で、心細くて、少し裏切られたような気がしてしまう。銀時に、私の必要性を感じられない。それは、酷く不安だ。

「ただいま」
「あ…おか、えり」


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