「そんじゃあ行ってくるわ」 「…いってらっしゃい」 銀時はいつもと変わらない顔で玄関の扉を閉めた。ここに来てからおおそよ一週間。結構この環境にも慣れて、仕事もぽつりぽつりと入りだした。それは私にも銀時にも嬉しい事だけど、私には納得行かないことがひとつだけあった。 「そんじゃあ行ってくるな」 「え…私は?」 初仕事の時。それは近所の人の引越しの手伝いだった。電話が掛かってきてから嬉しくて仕方なくてわくわくしてた。新しい生活が幕を開ける瞬間のような気がした。だけど翌日、銀時はごく当り前のように私を置いていった。 「お前はここで待ってろ、どうせ大した仕事じゃねェしよ」 やっぱり、やっぱり私はただの居候で、銀時の迷惑になってしまってるんだと思った。いつまでもこんな思い引きずって居たくないのに、そればっかりが頭の中をぐるぐる這い回る。これなら これなら、戦時中の方がよっぽど気が楽だったかもしれない。 ← → 戻る |