お伊勢さんのツテと、かぶき町の皆さんの優しさで一通りの生活必需品を(半分壊れているようなものが殆どだが)無料でそろえることができた。それぞれの場所に設置して、衣服を数着そろえるだけでその日は終ってしまった。銀時はその時知り合った人と飲みに行くというので、今夜は1人きりだ。スナックお伊勢で晩御飯を頂いた。キャベツの千切りにコロッケ、ご飯と豆腐のお味噌汁。やっぱりとっても美味しかったし、お伊勢さんやキャサリンさんとの会話も、女性同士で話す機会のすくなかった私としてはとても楽しいものだった。だけど、銀時が居ないって言うだけでなにか物足りなくなってしまって、私はすぐに上の家に帰って熱いシャワーを浴びて、濡れた髪のままで銀時の布団にもぐってやった。冷たく冷えた髪が肌に当たってくすぐったい。

「アンタ達、いろいろあったみたいだねえ」
「え?」
「近頃の若い奴等にしては目が綺麗だからねえ」

ついさっきお伊勢さんが言った言葉が頭を過ぎる。銀時の死んだ魚の目から、その奥に隠れているきらめきをたった数日で見抜いてしまったお伊勢さんは、私のことも褒めてくれた。だけど、私は褒められるに値するような人間ではないような気がしてならない。1人じゃなにもできないし、我侭を言ってばかりだし、周りのことなんて何も見えちゃいない。考えれば考えるほど、自分という人間を見失っていくようで恐かった。何も考えたくなくて、目を瞑るとよみがえる戦時中の出来事。傷が化膿して酷く痛んで眠れない夜や、仲の良かった同胞や少ない女の子の死んだ晩。銀時をはじめとする晋助や坂本、小太郎が遠くに行って帰ってこない夜など、眠れない夜は沢山あった。全てが辛くて悲しくて、だけど失うのはためらってしまうような思い出ばかり。私はあの経験を、プラスの方にもっていけているのだろうか。無駄にしてしまってはいないだろうか。私だけ置いていかれたりなんて、していないだろうか。銀時に呆れられて、見捨てられるような場面が思い浮かんだ。きっといつか、近い未来に。そう思うとじわりじわりと涙が目から染み出してきて、二日目の夜もやっぱり泣いてしまった。だけど昨日とは違って、声を押し殺して、布団に潜り込んで長い時間泣いていた。私は何もできずに涙を流す自分にさえ居た堪れないような虚しさを感じながら、ゆっくりと意識を落としていった。


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