いつも私が家を出る時間よりも、10分はやくインターホンが鳴った。私は昨日アイロンをかけたスカートを翻して玄関に向かう。スニーカーを履いて扉を開ける。そこには、いつもどおりの土方君がいた。

「…はよ」
「おはよう」

緊張しているようだ。そういえば、仮にも高校生の男女が、朝共に登校すると言うのは、なんだか、とても、アレだ…。ちっとも気が付かなかった。きっと土方君も、私を慰めるつもりがうっかりこんな事になってしまって恥ずかしいのだろう。どうしよう。そう考えた時、階段の方から心底嫌そうな声がした。

「土方…キモ」
「そっ総悟ォ!」

沖田君はそれこそ嫌なものから遠ざかるように駆け足で階段を駆け下りて行った。

「え、えと…」
「行くか」
「うん」

思えば変な話だ。私は昨日失恋して、今日土方君と恋人よろしく一緒に登校している。もしかしたら呆れられているかもしれない。
あまりこの学校の生徒が居ない方にある団地だから、この道を通っているうちの高校生は私たちだけだ。それまで無言だった土方君が、口を開いて息を吸う気配がした。

「言わない方が良いかと思ったが、言う」
「うん」
「目、腫れてないな。よかった」

ざわっと、風が吹くような感じがした。思わず、ずっとまっすぐを見ていた目を土方君に向ける。いつもの、剣道部で「鬼の副将」と恐れられるような鋭いまなざしではなかった。瞳孔は開いていたけれど。

「じろじろ見んな」
「あ…ごめん」
「別にいい」





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