校門が見えるひとつ前の角で、私と土方君は別れることにした。妙な誤解はお互い避けたかったからだ。その代わり、帰りも一緒に行く約束をした。

「…土方君」
「どうした」
「ありがとう。わたし、きのう、一杯一杯で、土方君がいなかったら、多分もっと大変なことになっていたと思う。ありがとう、ごめん、わたし、やっぱり、」

せんせいがすき。
言葉が咽を出る前に、土方君は私の口を塞いだ。勿論手で。俯いた土方君の表情は見えない。
もう半分泣いている私は、これから教室に行くことなどできないだろう。

「…苗字」
「んん」
「俺、お前が好きだ」

「お前が好きだった。ありがとう」

ぽろりと、感情が零れた。ゆっくりと私の口から土方君の手が離れ、一瞬だけ目が合った。
土方君はそのまま学校に向かって歩いていく。いつもの土方君らしく、真っ直ぐ背筋を伸ばして、少し上を見ながら歩いてゆく。

「がんばれ」

その声は、バイクの音に掻き消されそうになりながらも、しっかりと私の心を揺さぶった。

 


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