まさか…まさか、な。男、坂田銀八も悩める人間のひとりであった。昨夜、学校内でもまあまあランクの高い女子生徒からまさかの告白。不覚ながら冷静にあしらう事ができなかった。そして見てしまった土方が苗字を抱きしめている光景。これは…そのまさかなのか。教師人生ウン年間最大の疑問を抱いてしまう。
なんとなく職場もとい学校に向かいたくなくて、いつまでも玄関に座り込んでただ時が過ぎるのを待っていると、とうとう始業時刻になってしまった。
行きたくない、行きたくないと呪文のように頭を回していても、なにも進まないし変わらない。

そうだ、俺はなにもやましいことなんかしてないじゃないか。ただ、身近にいる大人の男に変な勘違いをしてしまった女子高生に、告白されただけで。"俺は"なにもしてない。後ろめたさに似た感情を抱く必要もない。
苗字も、土方とナカヨクなればいいんだ。

そう思い、やっとのことで重い腰をあげた。
我ながら情けない。こんなことでうじうじ悩むなんて、あいつが知ったらこんな面倒なことにもならなかったかもしれない。俺は自分が嫌いだ。どうして俺に好意を抱く奴がいるのかもわからない。

だけど、好意を抱いてくれる奴が居るのは、とても幸福なことだというのは、わかる。
もし、もしも苗字がまた俺に笑いかけてくれるようなことがあったら、俺も笑おうと思う。厭なしがらみもなにもかも振り切って、ありのままの自分で笑おうと思う。

しけったような頭を振り払うように、原付きに跨り風を浴びた。




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