泣き止んだ私は土方君と共に帰路に着いた。そこでなんと同じ団地に住んでいるということが発覚し、しかも同じ棟で私の家の真上が土方君の家という奇跡にも気付く事ができた。
「ありえねー」
「うん、すっごい偶然」
日常生活を送る中でなかなかめぐり合わないほどの偶然だったので、呆然と各々の感想を述べた。そして階段で土方君と別れ、もう見えつつある自宅に向かおうとした時、遠ざかりつつあった足音が再び私のほうに向けられた。反射的に振り返る。
「あっ、苗字…えっと、」
「うん?」
「け、ケータイ、番号…交換しようぜ」
「あっ登録してなかったっけ?」
「お、おう」
なぜか土方君の挙動がおかしい。とりあえず私達は赤外線通信を行った後、再び今度こそ帰路についたのであった。

合鍵を使って家に入り、母親に一言声を掛けて私室に飛び込む。ベットに倒れると、嗅ぎなれたわが家の洗剤のにおいがした。
改めて思い出す。一日でいろんなことがあった。先生に告白する、振られる、土方君になぐさめられる、土方君となんか仲良くなる。番号を登録しあう。凝縮された放課後だった。もう頭の中がぐちゃぐちゃすぎて記憶が断片的にしか残っていない。それをひとつずつ丁寧に集めてならべてみる。
(ああ…やばい、泣く)
土方君の前でとは違い、布団にしっとりしみこむように涙が出た。
それが私の心臓をぎゅうっと握り締めるようにして、私にはもう静かに涙を流す事しかできなかった。




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