「はあ…」
「溜息つくなや」
「幸せ逃げるぞ」
「すうっ!」
「…あのね、可愛いけど今更吸っても意味ないから、一度手放したものは二度と返らないから、世の中そんなに甘くないからァ!!」
「うるさい」
銀時くんが高杉くんに蹴られた。そして銀時くんと高杉くんは元気に喧嘩をはじめた。「お前はいっつもごちゃごちゃうるせーんだよ」「お前のその発言がうるせーんだよ背低杉」「あァ?」…正直どっちもうるさいです。ペラペラと求人誌をめくりながら屋上でまた溜息を…いや、もう吐かない。これ以上幸せを逃がしてたまるか
「何見てんの?」
「求人誌ー」
いつの間に喧嘩を終えたのか(ほんと変わり身早いなあ)銀時くんがまた私にまとわりついてきた。途端に高杉君が私の求人誌を奪い取る。ひどい。高杉くんなら自分の持ってるはずなのに。
「お前本気で言ってんのか」
「当然」
「いや、どや顔されても」
私はなんだかんだ言ってふたりが結構ノリ気なのを知っている。まあ、ノリ気のくせに「悪いけど俺やらねーから」とか言う銀時くんや「アホらし」とか言って私に嘲笑の眼差しを送る高杉くんは想像できた。
「銀時くんに高杉くん」
「あ?」
「なんだよ」
ぴらぴらと駅前のカフェの甘味食べ放題券と、学食半年無料券を見せ付ける。途端、2人の目の色が変わった。ふん、ちょろいな。
「ふたりが一緒にバイトしてくれたらあげようと思ったけど、残念だな」
かくして私のアルバイト大作戦は幕を開いたのである。