高杉君は薄汚れた作業着を着てシャベルで土を掘っていた。寒い寒いと言って無駄に私とくっ付こうとする銀時君に半ば諦めながらその姿を眺めていると、暫くして目が合って、凄い剣幕で睨まれた。こ、こわい。
「銀時君」
「んー?」
「見つかっちゃったよ」
高杉君を指差すと、銀時君はげ、と眉を顰めた。眉を顰めたいのは私のほうだ。こんなにくっ付かれたら、恋人か何かと間違われるではないか。
「あいつ超怒ってる」
「バイト先にいくと凄く怒るよね」
そうなのだ。高杉君は私と銀時君がバイト先に顔を出すたびに翌日凄い剣幕で私達を怒鳴る。カラオケボックスでもガソリンスタンドでもカフェでもどこでも怒るのだ。どうしてそんなに怒るのか聞いてみると、制服着てる奴が知り合いっぽく来ると年齢詐称がばれてしまうかららしい。私は年齢を偽造してまでバイトをしたことがないのでよく解らないが、ばれると辞めされられてしまい、給料ももらえないことが殆どだそうだ。
「折角来たのにね」
「帰るかー」
「うーん」
いつも放課後、私と銀時君だけで遊ぶって言うのは、なんだか寂しい。高杉君とも遊びたいのだ。バイトで忙しい高杉君とどうにかして放課後一緒に過ごすことはできないだろうか。
「あ」
「あ?」
銀時君は外に居るのが寒いらしく、さっきからずっと私にひっついて建物に入ろうと制服のセーターを引っ張っている。私が声をあげると、銀時君は一瞬大人しくなった。
「バイトしよう」
「えー、そしたら俺放課後ひとりじゃん」
「何言ってるの、3人でするんだよ」
そう言うと、銀時君と、いままで他人のフリをしていた高杉君がありえないものでも見るような目で私を見た(高杉君は睨んだと言った方が正しいかもしれない)。