私たちは毎日昼間の少しの時間を共有するようになった。
何をするでもない。会話もあったりなかったり。大抵私はぼうっと銀時くんの部屋のようすを眺めていて、金時君はじっと床をみつめている。
でも、今日は銀時くんの部屋にあったトランプをしていた

「ねえ、金時くん」
「……なに」
「やっぱりトランプの強さって学力に関係するのかなあ」
「……ルールによるだろ」

どんなゲームをしても金時くんの勝率は九割を割ったことがない。たまに私が勝つ時も、なんだかまぐれだったり、金時くんがさりげなく気を使ってくれているような気がする。

「…名前」
「ん?」
「いつまでここに居るんだよ」
「うーん、だいぶよくなってきたし、今週いっぱいかな」
「…………あっそ」

この空間にはありふれた沈黙が流れる。これはもしかしたら、寂しがってくれるのかもしれない。
ぶきっちょの心情を把握するのは、生憎慣れているのだ。

が、

「え?」
「…俺、おれには、名前が必要な気がする」
「なんで…」
「わかんねーよ。勉強できても、きっとお前の方がよく知ってる」

金時くんが私に影をつくった。布団にはりつけられた両手。いつもとは違う金時くんの顔。

「なあ、教えてくれ」
「金時君」
「どうして兄貴は俺の理想でいてくれなかったんだ」

金時くんの手は細かったけど、右手にひとつだけできたペンだこが、何故だかそれだけ無骨にみえた。

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