まわりの皆が私達を馬鹿にするように見下ろしても、こころのどこかでは社会のルールに逆らう私達に憧れているんだ。
やっぱり、冬は嫌いだ。だいきらいだ。この寒さを確認する為に息を吐く。そして白く濁った息をきつく睨んだ。最悪。
「待った?」
「うわっ!」
急に冷え切った手で首の後ろ側を鷲づかみにされて変な声が出た。もう聞きなれた声に振り向くと、銀時君がおもしろそうに笑った。
「何その声、いっろけねーえ」
「ば…馬鹿じゃん」
そう反論しながら、マフラーを巻いてこなかったことを心から悔やんだ。配慮が足りなかった。
「銀時君ってさ」
「うん?」
「サディストだよね」
そういうと銀時君は「あは、よく言われる」と能天気に切り返してきて、私の怒りも不完全燃焼してしまった。銀時君はこういう時、いっつもおどけた見たいに振舞って私の蟠りをまるでゴミみたいに丸めてどこかに飛ばしてしまう。
「高杉君は?」
「さあー、またバイトじゃねえの」
高杉君の言えば少し特殊で、高杉君はいつも、床に伏したままのお母さんの変わりに兄妹の為にどうにか収入を得ようと頑張っている。それは私も銀時君もよく知っていた。たしか、今のバイトは土木関係のものだった気がする。
「まあた、年偽造してやってんだろうなあ」
「頑張るもんね」
びゅう、とまた忌々しい寒い風が私と銀時君の間を通り過ぎた。こんなに寒くて乾いた日に、外で働くなんて。私はいつも不真面目な高杉君を少しだけ尊敬した。