あたしはどうやら本当に佳主馬くんに気に入られてしまったらしい。理由はちっとも検討つかない。だけど佳主馬くんが妊娠しているという聖美さんを気遣ったりしてるところを見ると、悪い人ではないらしい。お母さんと別れたあたしは佳主馬くんに腕を引かれて見知らぬ町を歩いていた。

「あ、そうそう。名前ちゃん、いい忘れてたんだけどね」
「は、はい」
「そんなに畏まらなくてもいいのよ、わたしたち明日から親戚がいる長野に行くの」
「母さん、行ってなかったの?」
「しょうがないじゃない、大丈夫よ、きっと名前ちゃんも気に入るわ」

聖美さんがあっけらかんと笑う。親戚の集まりに、見ず知らずのあたしが行くのは、どうなのだろう。でもあたしは聖美さんに預かってもらってる立場だからむやみな事はいえない。佳主馬君たちの家に付いて、リュックを降ろすと「明日には出るから、荷物は出さないでいいからね」と聖美さんが笑った。素敵な笑顔のひとだ。どうやらあたしは佳主馬くんと同じ部屋で寝る事になってるみたい。いくら子どもっていっても、あたしたちもう中学生なのに。あたしがおどおどしていても、佳主馬くんは当り前みたいに晩御飯のたくあんをかじってる。佳主馬くんのお父さんは聖美さんと同じで笑顔が似合う素敵な人だった。どうしてこの両親から、こんなぶっきらぼうな佳主馬くんが産まれるんだろう、と不思議になってしまうほど。聖美さんのおなかの中にいる赤ちゃんは、佳主馬くんみたいな子になるのかな?

「お風呂に入って、今日はもうねましょうね」
「はい」
「お風呂はこっち」
「あ、まって、佳主馬くん」

   
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