「うん。佳主馬くんのお母さんの実家で、よくさせて貰ってるよ。」
「迷惑なんかかけてないわよね?」
「……うん。大丈夫、だよ」
「そう、それじゃあ来週頃迎えに行くから」

プツ。強制的に通話が切られる。もう慣れたようなものだったけど、この強制的に通話を切られてしまうのが私は少し苦手だった。その感覚は、なんとなくお母さんに腕を引かれて私の家から駅まで行く道のりに味わった気持ちに似ていた。消沈してケータイを閉じる。夏独特のしめっぽくてさわやかな風が私のおでこを撫でた。誰かに頭を撫でられてるみたいで、少し安心する。もしかして、おばあちゃんかな。
おばあちゃんの事を少しでも思い出すと涙が出てきそうになってしまう私だけど、そんな弱いままじゃこの家の人にもおばあちゃんにも申し訳ないと思う。沈んでいた気持ちを奮い立たせるように歯を食い縛って掌をきつく握った。

「名前、いい?」
「佳主馬くん…」

   
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