佳主馬くんはなんだかよくわからない表情をして、あたしの目をまっすぐに見た。あたしはその視線をすぐに避けて、佳主馬くんに聞えてるんだか聞えてないんだかよくわからない声で「ごめんなさい」って呟いたあと、走ってその場から逃げ出した。自分でも驚くぐらい足は自然に動き出した。軽すぎて空回りしてしまいそうなほど。走ってあのテレビのある広い部屋まで戻ってきたら、衝撃的な言葉を聞くことになる。

「お世話になりました」

それは間違いなく健二さんの声で、間違いなくそれは、健二さんがこの家から立ち去る事を表していて、間違いなくそれは、あのOZの事件が関係しているわけで。
めまいがした。なにがなんだかわからない感情でつぶされそうだった。

健二さんが翔太さんの車に乗って、夏希さんが外に出た。まだ不自然なくらいに軽い足は裸足で夏希さんを追いかけていて、あたしの足はいつかの夜とは違う地面の感触を感じていた。白い車がどこか遠くに消えていって、夏希さんが息を吐いて、夏希さんが変なタイミングででてきたしまったあたしに何を言うでもなく頭を撫でてくれたから、だから、あたしは泣いてしまった。それはもう大声で。わんわんと。

   
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