「健二さん」
「…うん、」
侘助さんと夏希さんが去ってから、一回二人で花札をしてみた。始めてやる割に健二さんは飲み込みが早いらしく、あたしにちょっとしたルールとかを教えてくれた。結果はこいこいなしの健二さんの勝ちで、負けてしまったあたしはあーあ、と手札を座布団の上に広げた。
「おもしろいね、花札」
「うん」
二人で札を片付けていると、健二さんが何かに気づいたようにあ、と声を洩らした。
「名前ちゃんには言ってもいいかな」
「え?」
「僕、実は高校生なんだ」
わたしが返事をするよりも前に、後ろから畳が小さく軋む音がして、振り返るといつも以上に仏頂面の佳主馬くんが仁王立ちしていた。どうしてなのか解らないけど凄く機嫌が悪そうだ。
「名前、」
「は、はい」
それきり佳主馬くんは何も言わなくて、突然あたしの手を掴んで歩きだし、あたしはそれについていくしかなく唖然とする健二さんに何度も振り返りながら暗い廊下の方へ歩いていった。
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