あたしが知る中でも、あんなに熱い夏はなかった。

「今年の夏休みは、お母さんもお父さんもずっとお仕事でおうちに帰れないの」
「そうなんだ…」

夏休みに入る前日、通知表を貰って、息を乱しながら家に帰ってきたあたしにお母さんは無表情とも取れる顔で言った。あたしは、やっぱりか、と肩を落とした。毎年のことだから、別に今更どうってことない。ただ、今日は朝から家にお母さんが居たから、調子に乗って急いで帰って来ただけだから。お母さんは悪くない。

「だからね、お家にひとり名前を置いておくのも不安だから、お母さんの親友に預かってもらう事になったの」
「…おかあさんの、親友?」
「そう。名前と同い年の息子がいるの。名前も小さい頃何回か会った事あるのよ。憶えてる?」
「ううん、憶えてない」

お母さんが家にいるうちは悪い子になりたくなくて、あたしは黙って話を聞いた。明日の朝、お母さんと一緒に駅まで行って電車で名古屋まで行くらしい。それから一ヶ月間、あたしはそのお母さんの親友のお家にいるらしい。不安でいっぱいだったけど、お母さんには逆らえない。あたしは小さく頷いて、外出の準備をするため部屋に戻った。

「少しでも宿題、終らせておきなさいね」
「…はあい」


   
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