誰かと脱衣所で歯を磨いたり寝る前に誰かにおやすみを言ったり誰かと一緒に寝たりするのは凄く慣れなくて翌日の朝、あたしは全然眠れなかった。まだ重い瞼を持ち上げてまわりを見ると、やっぱり住み慣れた我家ではなくて、ドアの向こうからおいしそうな匂いがする。慣れないことばっかりで、不安で仕方ない。

「…おはよう」
「かずまくん」

後ろの斜め上から声がする。振り返るとベットに寝ていた佳主馬くんが体を起こしたようで、タンクトップが肩からずりおちている。佳主馬くんのベットの隣に布団をしいて寝ていたあたしはそのまま佳主馬くんを見上げていた。上を見ていないと、泣いてしまいそうだ。佳主馬くんはそんなあたしに気づいたのか一瞬目を見開いたあと、ぽんぽんとあたしの頭を撫で始めた。朝から、これがこの家では普通なのだろうか。いっつも機嫌が悪そうな顔をしている佳主馬くんがちょっと優しそうに笑うから、あたしは本当に泣いてしまった。だめだ、あたし、優しくされるのに慣れてない。

「大丈夫、」
「う、かずまくん」

頭の上に乗っている細い手が何故か懐かしい。お母さんは昔あったことがあるって言っていたけど、そのときもあたしは佳主馬くんに慰められたんだろうか。やっぱり思い出せないけど、きっとそうなんだろうな

「ねえ、名前」
「…え?」
「僕達が始めてあったときのこと、憶えてる?」
「憶えてない…」

こんなこと聞くってことは、佳主馬くんは初めて会った時のことを憶えているんだろうか。泣いて赤くなってしまっただろう目をこすりながら考えた。相変らず佳主馬くんの手はあたしの頭を撫でていて、同い年なのにくやしい。だけど、それに安心してしまうんだからしょうがない。これは、初対面じゃないから、普通?

  
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