大広間の方に行くと、健二さんと電気屋さんで働いているというおじさんがなにか大きな機械のようなものをいじくっていた。

「あ、名前ちゃん」
「作戦はうまく行ってる?」
「はい、なんとなく大丈夫そうなんで、皆さんの様子を見せていただこうと」

手際よく何かの部品を大きな箱型の機械にはめ込んでいく太助さん。実はこの大きな機械は、大学に納入予定のものを勝手に持ってきてしまったものらしい。健二さんが「なんだかすみません」と謝ると、太助さんは別段気にしたようすもなく「何いってるの」と話を続けた

「さっき健二くんおばさんたちに向かって堂々としてたでしょ、みんな、君を見直したはずさ。きっと佳主馬くんもね」

佳主馬くん…あのいじっぱりな彼がこの話の引き合いに出されるのはなんだか納得してしまったけど、彼は今何をしているんだろう。まだ修行してるのかな、でも師匠さん、どこかに言っちゃったから、きっと違う。

「ウチはどっちかっていうと女系家族で男が弱いもんでさ」

頼りなさげにははは、と笑う。確かに、家主が女性だったし、先代は遊び人だったらしいし、その様子はよく見る事ができていた。太助さんはもう話を続ける気はないらしく、考え方によってははぐらかしているようにも思える表情で「よし、あとは電源と回線…」とひとりごとを呟いた。
私は静かに健二さんの隣で太助さんの話を聞いていた。濃く影がたゆたう天井と柱の影や、部屋の奥のほうを眺めた。なんだか、陣内栄という人がこの家からいなくなって、なんとなくこの古い家も静かになっているようだった。
すると、庭のほうから車の音がする。健二さんと顔を見合わせて様子を見に行くと、そこには迷彩柄の乗用車よりも結構大きい車に乗る理一さんが居た。明らかに、民間人が勝手に使っていいようなモノではない。自衛隊にいるという理一さんだって、相当の力がなくちゃここまで持って来れないだろう。

「理一さんて…ほんとは自衛隊のどこ所属なんですか?」
「ちょっと言えないとこ」

ダイディにそう答える理一さんに、類稀な格好良さを感じると、今度は乱暴な破壊音が陣内家を振るわせた。恐ろしい勢いと怒号で現れたのは…漁船?船と一緒に師匠さんが居る。
テンションのまま大声で喋りまくり、師匠さんは「おっといけねえ、こいつ水冷だった!」といきなり陣内家の瀟洒な池に漁船を放り込んだ。

「すご…」
思わず私がそう呟くと同時に、すさまじい水しぶきが私と健二さんと太助さんにふりかかった。

  
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