ぎょ、として思わず腕を掴んだまま一歩後ずさると、バランスを崩した名前が僕にもたれかかってきた。予期せぬことに、僕も不意をつかれて崩れ落ちる。
「わたしが…ちゃんとしないから、」
「名前…」
震える肩に手を置こうとして、やめた。今そんなことしたら、また気を使わせちゃったなんて言って、また逃げるに決まってる。それだけは、どうしても避けたい。
「ごめんね」
そう言ってはらはらと涙を流す名前に、心臓がどくりと音を立てた。名前が僕の腕の中で泣いていて、もしかしてこれって物凄くアレなんじゃないだろうか。うん、そうだ。
「よくわかんないけど、わかった」
「…え?」
名前のおでこにちゅっと唇を当てると、名前はおもしろいくらいに固まって顔を真赤にした。
「名前は考えすぎ、もっと肩の力抜きなよ」
「う…うーん…」
自覚はないらしく僕に向かって可愛らしく首を捻って見せる。確信犯なんじゃないだろうか。それくらい、やばい。
「名前ちゃんに佳主馬ぁー、ごはんだよー」
広間の方からそんな声がして、僕と名前は一瞬目を合わせてから立ち上がった。そのときに自分の居た場所に気がついたらしくまた顔を赤くして僕の隣を歩く。どうやらもう僕を避ける気はないらしい。
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